金融機関が発行するキャッシュカードを使うと、カード利用者が金融機関に有している預金口座から即座に代金相当額が引き落とされ、代金の支払いを行うことができる即時決済システムをいう。国際的には、Visa(ビザ)やMasterCard(マスターカード)、日本発のJCB(ジェーシービー)といったブランドのカードが活用されているが、日本国内においてはJ-Debit(ジェイデビット)が稼働している。似たような仕組みを有するものとしては電子マネーがあるが、電子マネーは電子マネーのデータを取り扱うのに対し、デビットカードは預金債権そのものを取り扱う点において異なる。
仕組みは以下のとおりである。利用者が加盟店において物を購入する際に、カードを端末装置に読み取らせ、ATM(現金自動預金支払機)と同じ暗証番号を打ち込む。その際、利用者はカード発行金融機関(イシュアissuer)に対し代金債務を加盟店へ弁済することを委託する。その一方で、加盟店は取引金融機関(アクワイアラacquirer)に対し代金債権を売却する。この時点で、利用者の代金支払い債務は消滅し、加盟店は利用者に対する債権を売却した対価によって、代金債権の相当額の満足を得ている。その後、加盟店の取引金融機関は、加盟店から譲り受けた代金債権の弁済の受領を、カード発行金融機関に委任する。よって、カード発行金融機関は同一の代金債務について、弁済の委託と弁済の受領の委任を同時に引き受けたことになる。そして、利用者の預金から代金を引き落とし、加盟店の取引金融機関にその資金を移動して決済が完了する。前記のような複雑な仕組みを採用している理由は、仮にカード発行金融機関が倒産しても、利用者に二重払いのリスクから免れさせるためである。
日本では、J-Debitカードのインフラストラクチャー(基盤)整備、J-Debitカードサービスの普及のために、郵政省(現、総務省)や民間金融機関、流通業界によって日本デビットカード推進協議会が1998年(平成10)に設立され、1999年に取扱いが始まった。2005年(平成17)4月、同協議会および日本インターネット決済推進協議会、日本ICカード推進協議会が統合し、日本電子決済推進機構が設立。同機構は3協議会の事業を継承したが、デビットカード事業については日本デビットカード推進協議会の名称を継続使用している。2020年(令和2)1月時点で、J-Debitを導入している金融機関は1000を超え、端末設置台数は57万台となり、本格的に活用されている。なお、2000年ごろから、日本でも国際ブランドのデビットカードの利用が増加している。
2020年4月17日