日本大百科全書(ニッポニカ)

障害物競走
しょうがいぶつきょうそう
steeplechase 英語

(1)運動会などで行われる遊戯の一つ。運動場の走路の途中に置かれた網や梯子(はしご)をくぐったり、跳び箱、タイヤなどの障害物を跳び越えたりなどして、ゴールまで走る競走。
(2)陸上競技トラック種目の一つ。ハードル競走よりも大きくて重量のある障害(体操の平均台に似たもの)や水濠(すいごう)を跳び越えて速さを競う。オリンピックなど一般には3000メートルの距離で行われているため、3000メートル障害ともいわれる。3000メートルの距離を走るうちに、高さ91.4センチメートル(女子は76.2センチメートル)、幅3.94メートル(第1障害のみ5メートル)の障害を28回と水濠を7回越えなければならない。各周ごとに等間隔に5個の障害物を置き、4番目に水濠を越すようにする。水濠はトラックの外側または内側に設置され、いちばん深い所は70センチメートル(新しく建設される水濠は50センチメートル)で、あとは底がしだいに浅くなって反対側はグラウンドとほぼ同じ高さになるようにつくられている。競技者は障害物や水濠を越えるか、あるいは水濠の中に入って進むかしなければならない。各障害物に手あるいは足をかけてもいいが、障害物の外を通ったり、足または脚(あし)が障害物の外側にはみ出てバーの高さより低い位置を通った場合は失格となる。
 障害物競走の始まりは、乗馬による障害物競走はすでに中世のイギリスで行われていたが、一説には農園主に馬を借りていたオックスフォード大学の学生が、あまりにひどい馬を高い値段で貸すのに腹をたて「それなら自分たちで走る」と競馬の障害コースを走ったのが陸上競技の種目になったともいわれている。オリンピックでは、最初は距離がまちまちであったが、1920年のアントワープ大会から現行の3000メートル(1932年のロサンゼルス大会は3460メートルで実施)となった。女子の3000メートル障害がオリンピックで正式種目となったのは、2008年北京(ペキン)大会からである。
 特殊な種目であったため普及度も低く、世界記録として公認されるようになったのは1954年からと遅かった。2020年3月時点での世界記録は、男子はサイフ・サイード・シャヒーンSaif Saaeed Shaheen(カタール。1982― )の7分53秒63、女子はベアトリス・チェプコエチBeatrice Chepkoech(ケニア。1991― )の8分44秒32(2018年)である。
[加藤博夫][中西利夫]2020年4月17日