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電卓

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電卓
でんたく
electoronic calculator 英語

電子式卓上計算機の略で、小規模ながら記憶・演算・制御・入出力の各装置をもち、デジタル信号を取り扱い、四則演算およびその混合、応用計算を行う卓上型の計算装置をいう。
[佐々木正]

開発史

卓上型の計算機は機械式計算機(リレー式、手動式)が主流であったが、1964年(昭和39)2月早川電機工業(現シャープ)によってオールトランジスタ方式の電卓が世界で初めて商品化され、それに引き続き各社からも相次いで製品が発表された。当時はオールトランジスタ方式で部品点数は5000点にも及び、大型タイプライターなみの大きさと重量をもったオフィス用のものであった。
 以後、電卓は記憶・演算・制御に関しては半導体の革新技術が取り入れられ、現在では部品十数点、大きさも名刺程度という「軽・薄・短・小」化および低価格化が進み、個人用の時代を迎えている。またディスプレーについては、当初はニキシ管が使われたが、その後、蛍光表示管、液晶表示が用いられるようになった。このように電卓の開発史は半導体技術およびディスプレー技術の進歩の歴史といっても過言ではない。とくに、電卓の演算素子の半導体技術の変遷は、現在のIC産業を発展させた原動力となっており、MOS・ICの実用化には多大な影響を与えた。
 1967年にバイポーラIC約200個を用いた電卓が発売され、電卓のIC化が進められた。しかし、バイポーラICでは集積化および低消費電力が期待されないため、MOS・ICが注目された。そして、当時軍用として使われていたMOS・ICを電卓用ICとする開発が行われ、69年に4個のMOS・LSIによる電卓が発売された。その後、70年に2個のLSI、そして72年には電卓用LSIのワンチップ化が実現した。このワンチップ電卓を開発する途中でワンチップ電卓を3分割するという発想から、CPU(中央処理装置)、ROM(ロム)(読み出し専用メモリー)、RAM(ラム)(読み出し・書き込み可能メモリー)と分けてLSIのハードウェアを固定化し、ソフトウェアだけで電卓を開発するというアイデアが日本から提示された。それをアメリカのインテル社がマイクロプロセッサーとして発表し、これが現在のマイクロコンピュータのはしりになった。これ以後、マイクロコンピュータのプログラムを変更することにより、汎用(はんよう)性のあるソフトウェア指向の電卓の開発が可能となり、高機能な電卓が開発された。
 一方、ディスプレー技術においても、飛躍的な発展があった。当初、冷陰極放電管であるニキシ管が採用されていた。バローズ社が特許を所有していたニキシ管は、消費電力が大きいなどの問題があり、パーソナル電卓の開発においては致命的であった。その後、低消費電力の蛍光表示管が日本で開発され、また発光ダイオードなどの自己発光素子も使用されるようになった。しかし、小型で長時間使用可能なパーソナル電卓を実現するためには、低消費電力化が重要であり、半導体素子はCMOS(相補型)を使い、ディスプレーには受光タイプの表示素子である液晶が実用化された。また、単に数字を表示するだけでなく、文字などを表示するためにドットマトリックスタイプの液晶が79年に開発された。その後、低消費電力化はますます進み、現在は太陽電池駆動の電卓が主流になっている。
[佐々木正]

原理・構造

電卓の原理はほぼ大型コンピュータと同じであるが、機能の面で専用化されており、専用ワンチップLSIの中に演算部であるCPUと、演算順序をあらかじめプログラムされたROMと、データメモリーのRAM、およびキー入力とディスプレーなどの出力を接続するインターフェースから構成される。
 電卓の場合の小数点処理方式としては、おもに浮動小数点方式が使われている。この方式は、小数点以下の桁(けた)数をその計算機の許す範囲内でできるだけ多く求める方式である。
 過去、電卓において培われた技術は、時計付き電卓をはじめ、音声合成技術を利用した音声電卓などの複合商品を生み出し、さらにはポケットコンピュータ、電子翻訳機(電訳機)といった商品を開拓してきた。今後も薄型カード電卓の超薄型高密度実装技術などを活用して、新しいタイプの電卓が開発されるものと思われる。
[佐々木正]

©SHOGAKUKAN Inc.

メディア

オールトランジスタ式卓上計算機

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