日本大百科全書(ニッポニカ)

FTA
えふてぃーえー

Free Trade Agreementの略称。二国間など複数の国や地域の間で、貿易・投資の自由化や人的交流の拡大など経済関係の緊密化・円滑化を目的に結ぶ自由貿易協定。鉱工業品や農畜産物の関税撤廃・引下げ、サービス貿易の障壁解消を中心とし、高度人材や看護師などの人材移動、投資ルール、知的財産保護、競争政策、環境保護、テロ防止など幅広い項目を盛り込んだ包括的条約である。アメリカ、カナダ、メキシコが1992年に結んだ北米自由貿易協定(NAFTA(ナフタ))や1993年に発足したEU(ヨーロッパ連合)が有名で、TPP(環太平洋経済連携協定、Trans-Pacific Partnership)もFTAの一つである。ウルグアイ・ラウンドやドーハ・ラウンドのように、世界貿易機関(WTO)が進める100か国を超える通商交渉の合意には膨大な時間がかかるため、二国間や特定地域内だけでFTAを結ぶ流れが世界的に加速している。最近はTPP、日EU経済連携協定、日米貿易協定のような経済大国を含む複数国が広域でつくるメガFTA締結の動きが続いている。
 日本は2002年(平成14)に初めてシンガポールとFTAを締結し、2019年(令和1)12月時点で、21か国・地域(アメリカ、EU、インド、インドネシア、オーストラリア、カナダ、カンボジア、シンガポール、スイス、タイ、チリ、ニュージーランド、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ペルー、マレーシア、ミャンマー、メキシコ、モンゴル、ラオス)と18のFTA(TPPやASEAN(アセアン)とのFTAを含む)を発効済みである。このなかにはシンガポールのように、日本との二国間FTAに加え、日ASEAN間FTA、TPPと三つのFTAを結んでいる国もある。こうした複数FTAを結んだ場合、いちばん低い関税などもっとも有利な貿易協定が適用される。日本はRCEP(アールセップ)(東アジア地域包括的経済連携、Regional Comprehensive Economic Partnership)、トルコ、コロンビア、カナダ、韓国、日中韓、湾岸協力会議(GCC。アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6か国)との間でもFTA締結に向けた協議や検討に入っている(中断中のものも含む)。WTOの多国間協定を重視した日本は当初FTA締結で出遅れたものの、最近はTPPなどのメガFTAを締結し、貿易全体に占めるFTA相手国との貿易比率は2019年3月時点で51.6%と、アメリカ(44%)、EU(36%)、中国(38%)など主要国と遜色(そんしょく)ない水準まで上昇した。
 なお、同様な経済用語にEPA(経済連携協定、Economic Partnership Agreement)があるが、EPAは日本政府(外務省)がつくったことばで、FTAと同じ概念である。
[矢野 武]2020年5月19日