日本大百科全書(ニッポニカ)

調査捕鯨
ちょうさほげい
research whaling

商業用ではなく、鯨の生態や生息数などを科学的に調査するための捕鯨。具体的には、国際捕鯨取締条約第8条に基づく鯨類の捕獲調査をさす。国際捕鯨取締条約は、捕鯨の取締りと資源管理のために、1946年に締結された。この条約は、条約付表によって捕鯨操業に対して多くの規制を課しているが、本文第8条第1項によって、加盟国政府が自国民による科学的研究のために、条約付表に定めるすべての規制を外して、鯨を捕獲して調査する許可書を発給することを許している。それに加えて条約第8条第2項において、この許可書によって捕獲した鯨体は、調査した後できる限り加工して利用し、その取得金は政府の発給した指令書に従って処分しなければならないことも定めている。これらのことが一般に「調査捕鯨」と称されている。

 調査捕鯨はアメリカを含む多くの加盟国が、種々の目的をもって、種々の鯨類を対象に実施してきた。1982年における国際捕鯨委員会(IWC)による商業捕鯨の一時中止決定以後も、ノルウェー、アイスランド、韓国が調査捕鯨を行ってきた。日本は1987年(昭和62)から南極海において、1994年(平成6)からは北西太平洋において、ミンククジラを対象にして調査捕鯨を実施していたが、2000年からは北西太平洋において、ミンククジラのほかに、ニタリクジラとマッコウクジラ、2002年からは同地域でイワシクジラを調査捕鯨の対象に加えた。さらに2005年から南極海においてクロミンククジラ、ナガスクジラの調査捕鯨を行った。

[大隅清治]

 これに対し反捕鯨国のオーストラリアは2010年、日本の南極海での調査捕鯨の中止を求めて国際司法裁判所に提訴した。国際司法裁判所は2014年、日本の南極海での調査捕鯨を「科学調査目的といえない」として中止を命じる判決を出した。これを受け国際捕鯨委員会(IWC)も調査捕鯨を再開しないよう求める決議を採択した。このため日本は、南極海での調査捕鯨から撤退し、北西太平洋での調査捕鯨も縮小を余儀なくされていたが、2015年(平成27)12月に捕獲数を削減して南極海での調査捕鯨を再開。2019年(令和1)6月末には国際捕鯨委員会を脱退し、これまでの調査捕鯨にかえて、2019年7月から商業捕鯨を1988年(昭和63)4月の中断から31年ぶりに再開した。対象は日本近海(日本領海と排他的経済水域)のミンククジラ、イワシクジラ、ニタリクジラである。

[矢野 武]2020年8月20日

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