国内で一定期間(四半期、1年など)に生産された付加価値の総額であり、一国の経済規模を示す代表的な指標である。GDPと略称される。付加価値は国内における生産額(国内産出額)から、原材料などの中間財の使用額(中間投入)を差し引いた額として定義される。生み出された付加価値はだれかの所得になるため、GDPは労働者の賃金総額(雇用者報酬)、企業の利益(営業余剰・混合所得)、設備などの減価償却費(固定資本減耗)などの合計としても定義される。
さらに、GDPは最終需要の合計としても定義され、国内総支出(GDE:gross domestic expenditure)ととらえることもできる。具体的には、民間最終消費支出、政府最終消費支出、国内総資本形成(民間設備投資、民間住宅投資、公的固定資本形成、在庫変動)、財・サービスの輸出の合計から財・サービスの輸入を差し引いたものとして定義される。このようにGDPを生産、所得(分配)、支出の三面から観察すると理論的に同じ値になることを「三面等価の原理」とよぶ。
GDPには名目値(名目GDP)と実質値(実質GDP)がある。名目値は各年の財やサービスの価格水準で評価されたGDPであるのに対し、実質値はそうした価格変動の影響を取り除いたものである。GDPの変動率を経済成長率とよぶことが多いが、注目されるのは実質GDPの変動率である。
なお、ここでいう「国内」とは、ある国の国境で囲まれた政治的な領土(海外領土および属領は含まない)のことであるが、その中にある外国政府の大使館、領事館および外国軍隊施設などの所在する治外法権の及ぶ飛び領土は除外され、逆に、他国の領土内にある当該国の同様の飛び領土は含まれる。また、当該国の企業などが運営する船舶や航空機、あるいは漁船団、さらには当該国が独占使用権をもつ地域における原油や天然ガスの発掘装置やプラットフォームなども、この「国内」概念に含まれる。
GDPは、国民経済計算(SNA)における重要な項目の一つであり、データを利用する際は、どのような国際基準で計測されているのかに注意すべきである。2020年(令和2)時点の日本のGDPは2008SNAとよばれる国際基準で、かつ、2011年(平成23)の産業連関表の情報などを反映している(これを「2008SNA2011年基準」とよぶ)。この基準は、2016年12月に公表された年次推計(2015年度国民経済計算)から採用されているが、改定前(1993SNA2005年基準)に比べて、各年のGDPは5兆~30兆円程度大きくなった。2008SNAにおいて、従来は中間投入として扱われた企業の研究・開発(R&D:Research and Development)が民間設備投資としてカウントされるようになったためである。
2019年12月に公表された年次推計(2018年度国民経済計算)によると、2018年の名目GDPは547.1兆円であった。
2020年9月17日