北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は、対米抑止力を確保するとともに、それを外交カードとして活用するため、核兵器開発を推進してきた。北朝鮮初の核実験は、2006年10月9日に実施された。地震波規模マグニチュード4.1、爆発規模0.5~1キロトンと推定される。実験の6日前には北朝鮮外務省が「安全性が保証された核実験を行う」との声明を発表していた。その後、それまで強硬な姿勢をとっていたアメリカのジョージ・W・ブッシュ政権が北朝鮮との対話に前向きな姿勢をみせるようになり、この実験は北朝鮮にとって瀬戸際政策の典型的な成功例だったといえる。
2回目の実験は、2009年5月25日に実施された。地震波規模マグニチュード4.52、爆発規模2~3キロトンと推定される。北朝鮮はこれに先だつ4月14日、北朝鮮・韓国と日米中ロによる六か国協議からの離脱を表明し、同月29日には「核再実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を含めた自衛的措置を講じる」との外務省代弁人声明を発表していた。ここまでが金正日(キムジョンイル)政権下での実験である。
3回目の実験は、金正恩(キムジョンウン)政権下、2013年2月12日に実施された。地震波規模マグニチュード4.9、爆発規模6~7キロトンと推定される。同年の1月23日には北朝鮮外務省が「核抑止力を含む自衛的な軍事力を拡大、強化する物理的対応をとる」との声明を出していた。2012年4月の憲法改正で「核保有国」であることを誇示し、2013年3月には朝鮮労働党中央委員会全員会議(総会)で経済建設と核開発を両立させる「新たな並進路線」を打ち出した。その後、北朝鮮の核開発はいっそう加速化する。
4回目の実験は、2016年1月6日に実施された。地震波規模マグニチュード4.85、爆発規模は6~7キロトンと推定される。この実験以降は事前通告が行われなくなった。初の水爆実験とされたが、それを疑問視する声もある。
5回目の実験は、2016年9月9日実施。地震波規模マグニチュード5.1、爆発規模11~12キロトンと推定される。北朝鮮の核兵器研究所は「核弾頭の威力判定のための核爆発実験を断行」「アメリカをはじめとする敵対勢力どもの脅威と制裁騒動に対する実質的対応措置の一環」と声明。「戦略弾道ロケット(ミサイル)に装着できるように標準化、規格化した核弾頭」の製造能力を獲得したとアピールした。
6回目の実験は、2017年9月3日実施。地震波規模マグニチュード6.1、爆発規模160キロトンと推定される。最大で250キロトンとの推定もあり、能力の飛躍的向上が明確になった。アメリカがトランプ政権となってから初の実験。核兵器研究所は「ICBM搭載用水爆実験を成功裏に断行」と声明。その後11月29日のICBM発射実験により、「国家核武力の完成」が政府声明として宣言された。
金正恩政権は、これらの実験成果を背景にして翌2018年6月、史上初の米朝首脳会談を実現した。
2020年10月16日