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日本大百科全書(ニッポニカ)

投資銀行

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投資銀行
とうしぎんこう
investment bank

証券引受業務や企業の買収・合併(M&A)などの仲介業務を行う金融機関。インベストメント・バンクともいう。アメリカ独自の発展をしてきた機関であり、銀行の名がついているが証券会社に類似した金融機関である。

 アメリカの南北戦争末期に富裕な商人が証券の引受けなどに関与したのが始まりである。これが発展して19世紀末から20世紀初頭にかけて投資銀行が設立され、アメリカの工業化に資金調達の面で寄与した。代表的なものとしてリー・ヒギンソンやスパイヤー・アンド・カンパニーなどがあり、現在も存続しているものとしてはモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスなどがあげられる。

[石野 典][平田英明]2020年10月16日

歴史

1837年の恐慌で銀行の倒産が多発し、金融制度の変革が進むなかで、州法で銀行の免許が与えられ投資銀行が登場した。これについては、法人銀行が営業範囲を州に限定されたのに対して、個人銀行は全米で自由に営業できるなど、アメリカの銀行制度の特殊性を見逃せない。この個人銀行が投資銀行へと成長する。

 しかし、20世紀に入り1930年代の金融恐慌を契機に、グラス‐スティーガル法Glass-Steagall Act(1993)が制定され、預金業務を行わない投資銀行が商業銀行と明確に区別された。のちに大手の投資銀行は、総合証券会社にとどまらず証券発行の引受けと引受主幹事となり、また私募債の斡旋(あっせん)、企業の買収・合併の仲介、さらに企業の資金調達のコンサルタント業務に力を入れるようになり、そこに投資銀行の特色があった。また、投資信託や投資顧問などの業務も行うようになり、そのため1940年の投資会社法によりアメリカ証券取引委員会(SEC)の監督下に置かれるようになった。なお、1980年代以降は金融の規制緩和により、商業銀行による投資銀行業務への参入が進み、投資銀行と商業銀行の垣根は低くなっていった。

[石野 典][平田英明]2020年10月16日

2000年以降の動向

2000年代以降、投資銀行が収益源として積極化させたのが、トレーディングとよばれる自己勘定取引(投資銀行が自己資金で行う投融資)である。2008年の世界金融危機発生前に急速に市場が拡大した、サブプライムローンなどを裏づけとした証券化商品への投資もこれに含まれ、当時業界5位のベアー・スターンズは2008年春に経営難に陥り同年5月にJPモルガン・チェースに救済合併され、リーマン・ショックの名で人々の記憶に残ることとなった業界4位であったリーマン・ブラザーズは同年9月に経営破綻(はたん)することとなった。業界3位のメリルリンチはバンク・オブ・アメリカに買収され、業界1位のゴールドマン・サックス、2位のモルガン・スタンレー(三菱UFJフィナンシャル・グループが出資)は銀行持株会社に移行し、両者はFRB(連邦準備制度理事会)の監督下となる。これにより、国際決済銀行(BIS)の自己資本比率規制を満たす必要が生じ、それまで積極的に行っていた、レバレッジを利かせた投資が行いにくくなった。ここで、レバレッジは梃子(てこ)を意味し、レバレッジを利かせるとは、低利で調達した資金を使って証券化商品などのリスク資産への投資を行い、高収益をねらうことを意味する。そのため、とくに世界金融危機以降は富裕層向けの資産管理等に力を入れ、業務の多角化を通じた収益性の維持向上に努めている。

 なお、日本では国内の大手証券会社や銀行グループなどに加え、外資系の証券会社により投資銀行業務が行われている。

[平田英明]2020年10月16日

©SHOGAKUKAN Inc.

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