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日本大百科全書(ニッポニカ)

ミツマタ

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ミツマタ
みつまた
〔三椏〕
Edgeworthia chrysantha Lindl.
Edgeworthia papyrifera Sieb. et Zucc.

ジンチョウゲ科(APG分類:ジンチョウゲ科)の落葉低木。樹皮の繊維を紙の原料とするために栽培される。中国原産で、日本に伝来した年代は不明であるが、17世紀以前のこととみられる。樹高1~2メートルで、枝がすべて3本に分かれるのが特徴で、ミツマタの名はこれに由来する。葉は互生し、葉柄があり、葉身は長楕円(ちょうだえん)形で全縁、裏面は細毛が密生して灰白色。晩秋、落葉したころからつぼみが発育し、翌年の早春、葉が出る前に開花する。花は多数の小花が球状に集まった花序をなす。花弁はなく、4枚の卵形で黄色の萼片(がくへん)が花弁のように開く。雄しべは8本、雌しべは1本。果実は先のとがった痩果(そうか)で、夏に熟す。東北地方以西に生育し、西日本の暖地が栽培適地である。品種には青木(あおき)、赤木(あかぎ)などがある。西日本の山地には、野生化したものもみられる。

 幹や枝の靭皮(じんぴ)繊維はじょうぶで、枝を切って煮たり蒸したりして樹皮を剥(は)ぎ取り、水に浸(つ)けて漂白する。これをたたいて繊維をほぐし紙漉(かみす)きの原料とする。繊維はコウゾ(クワ科)より短く平均3ミリメートル程度なので、手漉きのほかに機械漉きにも適し、加工が容易である。ミツマタ和紙は良質でじょうぶ、しかも虫害を受けにくいので、鳥の子紙など高級和紙として昔から重用され、現代では紙幣や証券用紙とされる。また薄く漉いてもじょうぶなので、コピー紙や謄写版原紙としても重要である。

 栽培は種子を播(ま)いて苗を仕立て、本植後3~4年目から毎年枝を刈り取り、20年間も収穫を続けることができる。最近は和紙の利用減につれ繊維作物としての需要が減ってきたが、早春の花が美しいので観賞用庭園樹として普及している。

[星川清親]2020年10月16日

©SHOGAKUKAN Inc.

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