生計の担い手である被保険者が死亡したとき、その人によって生計を維持していた所定の遺族に支給される年金。遺族年金には、国民年金から支給される全国民共通の遺族基礎年金のほかに、厚生年金保険の遺族厚生年金がある。
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者または老齢基礎年金の資格期間を満たした者が死亡したとき、その者によって生計を維持していた子のある配偶者または子に支給される。この場合の子とは、婚姻をしていない18歳到達年度の末日までの子または20歳未満であって障害の程度が1、2級の子である。ただし、子に対する遺族基礎年金は、配偶者が遺族基礎年金の受給権を有するとき、または生計を同じくする父または母があるときは、その間支給停止される。遺族基礎年金の年金額は定額で、配偶者と子1人では年額100万6600円(2020年度)、子が増えると加算される。
遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者や老齢厚生年金の受給権者などが死亡したとき、その者によって生計を維持していた遺族に支給される。支給対象となる遺族の範囲は、遺族基礎年金の支給対象となる遺族(子のある配偶者または子)、子のない配偶者(夫の条件については後述)、被保険者等が死亡したときに55歳以上である夫・父母・祖父母(いずれも60歳から支給)、孫である(子、孫の条件は遺族基礎年金の子の場合と同様)。したがって、遺族が子のある配偶者または子のときは遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が支給され、その他の遺族には遺族厚生年金のみが支給される。遺族厚生年金が支給される遺族の順位は、(1)配偶者と子、(2)父母、(3)孫、(4)祖父母であり、先順位の者が受給権を取得すれば、その後に先順位の者が受給権を失っても、次順位の者には支給されない。遺族厚生年金の年金額は、報酬比例の年金額の4分の3を基本として、妻が受給権者の場合は、これに中高齢の寡婦加算額または経過的寡婦加算額を加えた額である。遺族厚生年金の年金額の計算では、被保険者期間中の死亡などで被保険者期間が300月未満のときは300月として計算する。遺族年金と老齢年金の受給権を取得したときの併給関係については、遺族厚生年金と老齢基礎年金は併給される。一方、遺族厚生年金と老齢厚生年金については、65歳未満ではいずれか一つの年金の選択制であり、65歳以上では、老齢厚生年金は全額支給されるが、遺族厚生年金は老齢厚生年金より年金額が高い場合に、老齢厚生年金の額との差額が支給される。
2020年11月13日