労働者が失業した場合などの失業等給付および育児休業給付を支給するともに、雇用保険二事業(雇用安定事業、能力開発事業)を行う保険制度。雇用保険法(昭和49年法律第116号)に基づく。従来の失業保険にかわって1975年(昭和50)に発足した。
失業等給付には、失業者への求職者給付のほか、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付(高年齢雇用継続給付、介護休業給付)がある。また前記2事業のうち、雇用安定事業には、雇用調整助成金、労働移動や地域雇用開発を支援する助成金等があり、能力開発事業には、職業能力開発施設の設置運営、事業主による能力開発に対する助成金等がある。
雇用保険は、原則としてすべての事業を適用対象としているが、農林水産業の5人未満の個人事業は暫定的に任意適用で、公務員は適用除外になっている。適用事業に雇用される労働者は当然に雇用保険の被保険者になる。なお、従来は適用除外とされていた65歳以降に雇用された者についても、2017年(平成29)1月から、雇用保険が適用されている。
雇用保険の費用は、事業主と被保険者が負担する保険料と国庫負担によりまかなわれる。失業等給付・育児休業給付の保険料率は賃金総額の0.6%(2020~2021年度)で、事業主と被保険者が折半して負担する。二事業の保険料率は0.3%(2020~2021年度)で、全額を事業主が負担する。なお、農林水産業、清酒製造業および建設業については、季節的労働者が多く失業の発生率が高いため、やや高い保険料率になっている。国庫負担は、求職者給付の25%、雇用継続給付(高年齢雇用継続給付を除く)の12.5%が原則であるが、2007年から当分の間、求職者給付については本来の負担額の55%にあたる13.75%(2020~2021年度は時限措置として10%にあたる2.5%)に引き下げられている。
なお、2020年(令和2)には、新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律(令和2年法律第54号)が制定され、新型コロナウイルス感染症等の影響により休業させられた労働者のうち、休業中に賃金を受けることができなかったものに対して新型コロナウイルス感染症対応休業支援金を支給する事業等を行うことができることとした。また、雇用保険の基本手当の給付日数を最大60日に、受給期間を最大3年に延長する雇用保険法の特例措置等を講じた。
2020年11月13日