株式、預貯金、保険など幅広い金融サービスを扱う業者に、元本割れリスクや信用リスクなどの説明義務を課し、違反時には顧客が損害賠償請求できるとした法律。正式名称は「金融サービスの提供に関する法律」(旧、金融商品の販売等に関する法律、略称は金融商品販売法、平成12年法律第101号)で、金融サービス法、金融サービス仲介法ともよばれる。預金者や投資家の保護を目的に、金融商品販売法(2001年施行)として制定され、デジタル技術の急速な進展にあわせて2020年(令和2)に改正・名称変更され、スマートフォンなどを介して銀行、ローン、証券、保険サービスを一括提供できるようにした。改正法は2021年末までに施行する。所管官庁は金融庁と消費者庁。
民法は、金融サービスの損害賠償について、業者説明の有無、被害算定額、違法行為との因果関係などの立証責任はすべて顧客にあるとしており、顧客が泣き寝入りするケースがあった。2001年の金融商品販売法の施行で、顧客は商品に関する重要事項について販売業者の説明が不十分であったことのみを立証し、業者が反証できなければ、元本割れの該当額(元本欠損額)が補償されることになった。対象は預貯金、国債や社債などの債券、株式、投資信託、保険・共済、ファンド商品、金融派生商品(デリバティブ)などで、商品先物(さきもの)取引は対象外。業者に課された重要説明事項には、元本割れのおそれ、価格変動リスク、倒産リスク、権利行使期間や解約期間の制限などが含まれる。
2020年の改正では銀行、証券、保険などの業態ごとに別々であった許可・登録制度を一本化し、金融サービスをワンストップで提供できる金融サービス仲介業を創設。業者は1回登録すれば、銀行法、金融商品取引法、保険業法などが規定する多様な金融サービスを提供できるようになった。政府は金融サービス仲介業者としてフィンテック企業などを想定し、従来のように銀行や証券会社など特定の金融機関の所属になる必要はなくなった。ただ顧客保護の枠組みがおろそかにならないよう、仲介業が扱う金融サービスは複雑な説明のいらないものに限定し、仕組預金、非上場株、外貨建て保険などは対象外とする。サービス購入代金など顧客財産の受入れも禁止する。金融サービス仲介業者には、手数料や報酬などの開示義務のほか、顧客への損害賠償資金を確保するため、保証金の供託義務も課す。またキャッシュレス時代にあわせ、キャッシュレス事業者が100万円超の高額送金をできる許可制も導入した。
2020年11月13日