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日本大百科全書(ニッポニカ)

黄庭堅

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黄庭堅
こうていけん
(1045―1105)

中国、北宋(ほくそう)の詩人。字(あざな)は魯直(ろちょく)。山谷(さんこく)道人と号する。分寧(江西省)の人。代々進士を出した名家に生まれ、早熟の神童として知られた。蘇軾(そしょく)に師事したが、詩名は並称される。政治的立場はむしろ是々非々主義であったが、新法・旧法の争いのなかで、新法党に憎まれ、何度も辺境に流罪になり、ついに宜州(ぎしゅう)(広西省)で死んだ。身辺には弟子1人が付き添うだけであったという。『予章(よしょう)黄先生文集』30巻、同外集17巻がある。彼の父や義父は宋代において杜甫(とほ)を崇拝した早いグループに属し、その影響のもと、杜甫から韓愈(かんゆ)に連なる知的技巧主義と、特異な感覚の尊重を受け継ぎ、宋代主知主義の典型的な詩人となった。その詩はさまざまなくふうを凝らした知的技巧により磨き上げられている。なかでも「点鉄成金」「換骨奪胎」と自らよんだ、古人の詩句を活用、新しい自分の詩をつくりだす手法は世に知られている。「陽関の一曲、水東に流る。灯火の旌陽(せいよう)、一釣舟(いちちょうしゅう)。我自ずからは只(ただ)常日の如(ごと)く酔う。満川の風月、人に替わりて愁う。」(「夜分寧(よぶんねい)を発す、杜澗叟(とかんそう)に寄す」)はその例。北宋末期から南宋初期にかけては彼の詩風が流行し、江西派とよばれた。明(みん)代に入ると古文辞派の人々から、宋の偽詩の代表として非難を浴びた。清(しん)末に宋詩が尊重されるようになると再認識される。

 日本では、室町時代、五山の禅僧の間で、蘇軾とともに愛読された。書においては、蔡襄(さいじょう)、蘇軾、米芾(べいふつ)とともに北宋の四大家とされる。唐の張旭(ちょうきょく)、懐素(かいそ)に学び、懐素「自叙帖」の真髄を得たと自らいう。行草に優れ、伝存する真跡が多い。

[入谷仙介]

©SHOGAKUKAN Inc.

メディア

黄庭堅『草書廉頗藺相如伝』

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