遠隔操作や自動操縦で飛行する無人機の総称。英語のdroneは雄ミツバチの意味で、ブーンというハチの羽音から命名されたとされる。無人飛行機の英語の頭文字からUAV(unmanned aerial vehicle)、UAS(unmanned aircraft systems)などと略される。ハンググライダーのような固定翼航空機型と、回転翼(ローター)で垂直・水平飛行が可能な回転翼航空機型(マルチコプター)がある。大きさは全長10センチメートルほどの小型機から軍事用の大型機まで多様。1910年代から無人偵察・攻撃機として開発が始まり、第二次世界大戦後に実用化され、冷戦期を通じて軍事用として活用されてきた。21世紀に入って安価で小型・軽量なジャイロ・加速度センサーや二次電池が実用化され、複数ローターを搭載したマルチコプターが登場して民生需要が拡大した。一般にドローンといった場合、複数ローターをもつ小型マルチコプターをさす。全地球測位システム(GPS)や高性能カメラを搭載し、(1)鳥瞰(ちょうかん)の画像や映像の撮影・送信が可能、(2)人の近づけない危険地帯や過疎・離島地などで活用できる、(3)渋滞などに関係なく高速で移動可能、(4)スマートフォンなどで容易に操作できる、といった特性をもつ。このため玩具のほか測量、高層ビル・橋梁(きょうりょう)・プラントなどのインフラ点検、スポーツ中継や事件などの報道・取材、通信の中継、荷物・食品の物流・配送、過疎・孤立地域への医薬品・生活物資の輸送、農薬・消毒液散布、気象・海洋観測、森林管理、氾濫(はんらん)・浸水・崩落といった災害モニタリング、避難誘導・救助支援、警備・監視など広範な需要が生まれ、市場が拡大した。情報通信研究機構の予測によれば、2023年までの世界のドローンの市場規模は10兆円規模に達するとみられる。日本UAS産業振興協議会によると、世界のドローン出荷数は400万機(2018年)にのぼり、世界最大のドローンメーカー、大疆創新科技有限公司(DJI)はじめ中国企業が世界のドローン生産の7割を占める(2018年時点)。
海外ではアメリカのテキサス・カリフォルニア・アリゾナ州や中国、フランスなどが特区や都市を指定して関連ビジネス・技術を集中育成し、操縦者から見えない目視外飛行の基準づくりを進める戦略をとっている。一方、日本では2015年(平成27)以降、首相官邸や姫路(ひめじ)城、善光寺(ぜんこうじ)などでドローン落下事故が相次ぎ、規制が先行した。2015年12月以降、航空法(昭和27年法律第231号)をたびたび改正し、ドローン(機体重量200グラム以上)を無人航空機と規定し、空港周辺などの従来の飛行禁止空域に加え、高さ150メートル以上の空域、人口密集地や祭礼・縁日などイベント会場の上空、目視外空域、夜間などは国土交通大臣の許可がなければ飛行禁止とした。爆発物など危険物の輸送、物の投下、騒音や急降下を伴う飛行、飲酒・薬物摂取による操作も禁じた。違反者には1年以下の懲役または50万円以下の罰金(飲酒者は1年以下の懲役または30万円以下の罰金)を科す。2019年(令和1)7月からは許可を受けた飛行情報を国土交通省サイトへ事前に登録することも義務づけた。2016年3月には議員立法でドローン規制法(正称「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」、平成28年法律第9号)ができ、首相官邸、国会議事堂、最高裁判所、皇居、外国公館、原子力発電所などの半径300メートルの上空を飛行禁止区域とし、2019年には禁止区域に自衛隊施設や在日米軍基地上空を加え、時限措置として2019年ラグビーワールドカップ日本大会、オリンピック・パラリンピック東京大会の競技会場・施設の上空や、要人が利用する一部主要空港周辺も加えた(メディア取材などは適用外)。
ただ商用ドローン市場の急拡大をみすえ、2019年度の国土交通省への許可申請件数は4万8364件と3年前の約3.5倍に増え、技術向上で事故・トラブル件数は2019年度に83件と減少傾向にある。政府は2015年から、ドローン特区や実験飛行場を指定し、宅配事業、離島・過疎地域での買い物弱者支援、農薬散布、鳥獣被害対策、医薬品配送などの実証実験を部分的に進めてきた。ビジネス需要を後押しするため規制緩和を進め、2022年度には市街地上空の飛行(有人地帯での補助者なしの目視外飛行)を解禁する。また電波法に基づく免許不要の無線LAN(ラン)周波数帯に加え、2016年から免許の必要な周波数帯(5.7ギガヘルツ帯と2.4ギガヘルツ帯、169メガヘルツ帯)をドローン専用として割り当て、商用ドローン市場の育成を促している。
2020年12月11日