骨髄細胞を用いた造血幹細胞移植。略称BMT。1950年代にアメリカのE・D・トーマスらは、イヌを対象とした多くの骨髄移植の研究を行った。イヌに、イヌ主要組織適合抗原dog leukocyte antigen(DLA)を一致させたドナーの骨髄を移植し、免疫抑制剤を使用すると、移植が成功することが明らかになった。このような動物実験の成績をもとに、1959年には急性リンパ球性白血病の患者に全身放射線照射後、一卵性双生児同胞の骨髄が移植された結果、移植後2週で造血能が完全に回復した。ヒトでも条件を整え骨髄移植を行えば成功することが判明し、以後、多くの血液悪性疾患の治癒を目ざす治療法として確立されてきた。
骨髄提供者(ドナー)は自己、同胞(兄弟・姉妹)、血縁者、非血縁者の場合がある。造血幹細胞移植一般にいえることであるが、患者と提供者のヒト白血球抗原human leukocyte antigen(HLA)の型が一致しているほうが治療成績がよい。患者と骨髄提供者のHLAが異なるほど、移植された骨髄が拒絶されやすく、また、移植片対宿主病graft-versus-host disease(GVHD)がおきやすい。
HLAは両親それぞれから遺伝するので、同胞の間では4分の1の確率で合致することになる。したがって、同胞がいる場合はHLAを検査して合致する同胞を骨髄提供者に選択する。HLA一致の同胞がいない患者に骨髄を提供するために、非血縁者ドナー登録(骨髄バンク)が各国で設立されている。イギリスでは1975年に世界で初めての骨髄バンクが設立され、1986年には世界規模の全米骨髄バンクnational marrow donor program(NMDP)が開始された。日本では1992年(平成4)に骨髄移植推進財団による日本骨髄バンクJapan marrow donor program(JMDP)が設立され、HLAが一致した非血縁者から骨髄を提供する制度が整備されている。
移植のために骨髄を採取する場合、通常は骨髄提供者に全身麻酔をかけ、腸骨に骨髄採取専用の穿刺(せんし)針を刺し、骨髄液を吸引する。骨髄移植に必要な細胞量は患者体重(キログラム)あたり2~3×108個とされる。実際には成人で500~1500ミリリットル程度の骨髄液が必要になる。
2021年2月17日