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日本大百科全書(ニッポニカ)

末梢血幹細胞移植

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末梢血幹細胞移植
まっしょうけつかんさいぼういしょく
peripheral blood stem cell transplantation

末梢血幹細胞peripheral blood stem cell(PBSC)を用いた造血幹細胞移植。略称PBSCT。造血幹細胞は主として骨髄に存在し、骨髄液1ミリリットル当り10万~100万個の造血幹細胞が存在するが、末梢血液中には1ミリリットル当り約100個の造血幹細胞しか存在しない。これらの末梢血造血幹細胞も骨髄細胞と同様に造血幹細胞移植に応用できるが、きわめて少ないため応用しにくかった。

 1980年代から骨髄に存在する多くの造血幹細胞を末梢血液中に導き出す方法が開発されてきた。骨髄の働きを抑制させるような強い化学療法を行った後の造血回復期や、顆粒(かりゅう)球コロニー刺激因子granulocyte colony stimulating factor(G-CSF)などの造血因子の投与により造血幹細胞が末梢血液中に出現することがわかってきた。さらに近年、G-CSFにケモカイン(CXCR4)受容体拮抗剤であるプレリキサホル(商品名:モゾビル皮下注24mg)を併用すると、より効果的に造血幹細胞を末梢血に動員できることが明らかになった。このようにして血液中に動員した末梢血幹細胞を用いて、造血幹細胞移植を行うことを末梢血幹細胞移植とよぶ。

 末梢血幹細胞は通常、血液成分分離装置を用いて採取する。造血幹細胞は細胞表面にCD34抗原を有するので、採取した細胞のCD34抗原を調べ、一定量が存在することを確認して移植に用いる。移植に必要なCD34抗原陽性細胞数は患者体重(キログラム)当り1~2×106個と考えられている。採取した末梢血幹細胞をすぐに移植しない場合は、凍結保存することも可能である。とくに自己末梢血幹細胞移植の場合は、患者自身の末梢血幹細胞を採取し凍結保存する。その後、患者に大量の化学療法を行い悪性細胞を死滅させた後、凍結しておいた自己末梢血幹細胞を解凍し輸注する。

 末梢血幹細胞移植の特長として、全身麻酔下で行われる骨髄採取を要しないこと、移植後の造血回復が早いことがあげられる。現在、自己移植においては骨髄移植はほとんど行われず末梢血幹細胞移植がとって変わったといってよい。また、兄弟姉妹など同胞および非血縁者からの移植においても、末梢血幹細胞移植が普及してきた。この場合、ドナーにG-CSFを投与し血液中に出現した末梢血幹細胞を血液成分分離装置で採取する。末梢血幹細胞には、骨髄よりもリンパ球などの免疫担当細胞が多く含まれるので、免疫反応により白血病細胞を減少させる免疫療法の意義が期待される。一方、免疫反応により移植片対宿主病graft-versus-host disease(GVHD)の発症率や重症度が高くなる傾向があり、GVHDの対策もより重要な課題になる。

[比留間潔]2021年2月17日

©SHOGAKUKAN Inc.

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