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日本大百科全書(ニッポニカ)

軍事情報包括保護協定

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軍事情報包括保護協定
ぐんじじょうほうほうかつほごきょうてい
General Security of Military Information Agreement

外国政府との間で交換・共有された秘密軍事情報の漏洩(ろうえい)や目的外使用を防ぐため、相互にその取扱方法などを定めた国際協定。略してGSOMIA(ジーソミア)とよばれる。もともとは、アメリカ政府と、軍事情報を交換する国の政府間で結ばれた協定をさしていたが、いまでは同様の国際協定全般をGSOMIAとよぶことが多い。保護される秘密軍事情報には、さまざまな情報・監視活動により収集された情報のほか、軍事作戦に関する情報、軍事技術、兵器を開発・生産する企業が保有する知的財産権なども含まれる。

 日本は、2019年(令和1)7月の段階で、アメリカをはじめ7か国および北大西洋条約機構(NATO(ナトー))との間にGSOMIAを締結している。協定の名称は、「秘密軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」のように明確に「秘密軍事情報の保護」が謳(うた)われているものもあるが、オーストラリアとの協定である「情報の保護に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定」のように、単に、「情報の保護」とするものも多く「情報保護協定」(GSOIA:General Security of Information Agreement)とよばれることもある。しかし、協定の内容に大きな違いはなく、大半のGSOMIAとGSOIAには、ほぼ共通の内容が規定されている。GSOMIAとGSOIAは、特段、区別して考える必要はない。交換される秘密軍事情報は、アメリカ政府の秘密情報分類に従い3段階(Top Secret、Secret、Confidential)に分けて取り扱われることが多く、情報を保護するための原則として、情報受領国は(1)情報提供国の事前の承認なしに第三国へ提供しない、(2)提供国と同等の保護措置をとる、(3)目的外使用をしない、(4)関係する特許権などの知的財産権を遵守する、(5)情報にアクセス可能な資格者の登録簿を作成する、ことなどが定められている。また情報へのアクセスを許す有資格者の資格審査は厳格に行われ、「need-to-know」の原則に従い「知る必要がある」最少人数にのみアクセスが許される。情報保護措置と資格審査の対象は、情報の提供を受ける政府機関とその職員に限らない。戦闘機をライセンス生産する企業、ミサイル・電子機器など輸入された装備品を航空機や艦船に搭載する企業、それらのメンテナンスを行う企業など、秘密の軍事技術情報に接する民間企業とその職員も政府機関と同様の厳しい情報保護措置と資格審査が求められる。

 日本は、2007年(平成19)に初めてアメリカとGSOMIAを締結して以降、2010年NATO、2011年フランス、2012年オーストラリア、2013年イギリス、2015年インド、2016年イタリアおよび韓国と立て続けにGSOMIAを結んできた。このうち、アメリカ、インド、韓国以外は、GSOIAとして締結されている。このように急速に各国とGSOMIAの締結が行われるようになった背景としては、(1)戦闘機や弾道ミサイル迎撃用ミサイルなど、多額の開発費と最先端の技術を要する装備品の国際共同開発・生産が増えてきていること、(2)アメリカとその同盟国の次期主力戦闘機となるF35の生産とメンテナンスがグローバルなサプライチェーンを通じて行われるため、日常的に秘密の軍事技術に関する情報の交換と共有が不可欠なこと、(3)周辺諸国への軍事的な圧力を高めている中国とロシア、核兵器と弾道ミサイル開発で国連制裁を受けている北朝鮮、これらの国々に対する監視活動も、日本、アメリカをはじめとしたNATO諸国、オーストラリア、ニュージーランドなどの海軍・空軍が協調して行っているが、「ネットワーク中心の戦い」(NCW:Network Centric Warfare)が重視され、高速・大容量の軍用データ通信(データリンク)が整備された結果、こうした監視活動によって得られる位置情報、画像情報、弾道ミサイル・巡航ミサイルの航跡情報などが、即座にデータリンクを通して交換・共有されるようになってきたこと、があげられる。このように、日常的に秘密軍事情報の交換と共有が強く求められるようになった結果、包括的にその取扱方法を定めることの必要性が認識され、GSOMIAの締結が推進されたといえよう。

 2019年8月、韓国政府は、一度、日本とのGSOMIAを更新・延長せず破棄する決定を行ったが、アメリカ政府が日韓GSOMIAの継続を強く求めた結果、日本政府への破棄の通告は行われず、協定は維持された。しかし、韓国国内には、日本との軍事協定に反対する声も強く、韓国国内の政治情勢によっては、ふたたび、協定破棄の問題が浮上する可能性がある。2016年11月の締結以降、日本からは北朝鮮の弾道ミサイルの航跡情報などが、韓国からは人的情報活動(ヒューミント)によって集められた北朝鮮国内の情報などが、それぞれ交換されているといわれている。

[山本一寛]2021年2月17日

©Shogakukan Inc.

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