総人口に占める高齢者や子供(従属人口、65歳以上と14歳以下)の人口割合が高く、経済成長の足を引っ張っている状態をさす概念。オーナスonusとは「重荷・負担」との意味で、人口オーナス期は人口の年齢構成による経済や社会への不利益が続く時期をいう。人口オーナスの対語が人口ボーナスで、総人口に占める働くことができる人々(生産年齢人口、15~64歳)の割合が高く、経済成長を促す状態をいう。いずれもハーバード大学教授のデビッド・ブルームDavid E. Bloom(1955― )が21世紀初めに提唱した概念。国にあてはめると、人口オーナスは「年老いた国」へ変貌(へんぼう)していく国々であり、人口ボーナスは「若々しい国」といえる。日本では第二次世界大戦後、高度成長期から1990年代初頭まで人口ボーナス期であったが、1990年代なかば以降、人口オーナス期に入ったとされ、人口減や少子高齢化の進む日本では、人口オーナスが経済や政策を考えるうえで重要な概念になっている。
一般に、多産多死社会から多産少死社会へ移行すると人口ボーナス期に入るが、20~40年程度しか続かず、社会が成熟するにつれ、少子高齢化が進み、人口オーナス期に入るとされている。人口オーナス期の定義は統一されておらず、(1)生産年齢人口が従属人口の2倍未満である、(2)生産年齢人口比率が低下し従属人口比率の上昇が続く、などさまざまな考え方がある。人口オーナス期には、出生率が低く、平均年齢が高くなり、現役世代の労働力人口が減少する。また消費が低迷・減退し続けるうえ、貯蓄率が低下して資本ストックも減るため、経済成長率が低くなる傾向がある。現役世代に比べて高齢者が多くなり、社会保障制度の維持がむずかしくなるなどの特徴をもつ。世界では、日本のほか、イギリス、ドイツ、フランスなどの先進国がいずれも人口オーナス期にある。一方、インド、インドネシア、ベトナムなどアジアの多くの国々やブラジルなどの中南米諸国、ロシア・東欧諸国は人口ボーナス期にあり、アフリカ諸国は21世紀中盤から人口ボーナス期に入るとみられている。
2021年3月22日