ジャパンナレッジ
馬具の一種。鞍(くら)に付属し、鐙革(あぶみがわ)で馬体の左右の外側につるされ、馬に乗り降りするときや乗馬中に騎手の足の重みを支え、馬上での騎手の動きを容易にするもの。日本語の起源は足踏(あしぶみ)が転化して「あぶみ」となったとされる。鐙を発明したのは乗馬の得意な騎馬民族ではなく、得意でない農耕民族が馬に乗るときの足ふみとしたものが発達して、騎手に都合のよい道具となったものと考えられている。鐙は出土品などからみて、紀元前4世紀のスキタイや前2世紀のインドや中国の漢の時代に存在していたらしい。鐙には種々の形が知られている。世界共通の鐙は輪鐙(わあぶみ)を基本としたものである。最初は革紐(かわひも)や縄が用いられ、のちに木製や金属製になった。日本には古墳時代に輪鐙が伝来し、5世紀以後には壺鐙(つぼあぶみ)がつくられ、奈良・平安時代には舌長鐙へと発展し、日本独特の舌のある鐙になって江戸時代に至っている。明治以後は輪鐙の一種である洋鐙が用いられている。