キキョウ科(APG分類:キキョウ科)の多年草。秋の七草の一つにあてられているが、古くはアリノヒフキとよばれ、山上憶良(やまのうえのおくら)はアサガオを秋の野の花とするので、『万葉集』に5首詠まれるアサガオはキキョウのことであるといわれている。茎は直立し、高さ0.4~1メートル、円柱形で傷つけると白い液を出す。根は太く黄白色。葉は互生し、長卵形ないし広披針(こうひしん)形、長さ4~7センチメートル、先はとがり、縁(へり)に鋭い鋸歯(きょし)があり、ほとんど無柄、下面は白緑色。茎の上部で分枝し、8~9月に数個の青紫色花を頂生する。花径は4~5センチメートル、鐘形の花冠は5裂し、5本の雄しべは花冠裂片と互生し、雄蕊(ゆうずい)先熟である。1本の雌しべは花柱の先端が5裂し、柱頭はその内側に位置する。蒴果(さくか)は上端が5裂し、中に黒色の種子が多数ある。日当りのよい山地、原野に生え、日本、朝鮮、中国、ウスリー川流域に分布する。花が美しいので園芸植物となり、二重咲き、白色花などもつくられている。
根を桔梗(ききょう)と称して薬用にする。サポニンが多量に含まれており、近代医学では去痰(きょたん)剤として流エキスの形で使用する。セネガ流エキスよりも毒性が少なく作用は強い。漢方ではこのほかに排膿(はいのう)、鎮痛作用があるとして各種の腫(は)れ物、化膿性炎症、咽喉(いんこう)痛、肺炎、中耳炎などの治療に用いる。
中国では古代から根を薬用に使い、『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』(500ころ)に載る。日本では『出雲国風土記(いずものくにふどき)』に桔梗の名があがるのが最初の記録で、キキョウの名は漢名の桔梗から由来し、梗は呉音でキョウと発音されて、キチキョウ→キッキョウ→キキョウと変化したと推察される。江戸時代に品種が分化し、当時は八重咲き、薄ねずみ色、黄花の記録も残る。