動物分類学上は脊索(せきさく)動物門Chordata、頭蓋(とうがい)(有頭動物)亜門Craniata、脊椎(せきつい)動物下門Vertebrata、顎口(がっこう)上綱Gnathostomataに属する軟骨魚綱Chondrichthyesを構成する魚類。現生種は真板鰓(しんばんさい)亜綱Euselachii、板鰓下綱Elasmobranchii(板鰓類、サメ・エイ類)と、全頭亜綱(全頭類、ギンザメ類)Holocephaliからなり、約1200種が含まれる。なお、真板鰓亜綱は化石種(化石群)を含んだ体系であるため、現生種のみからなる板鰓下綱を、全頭亜綱に対して板鰓亜綱Elasmobranchiiとする研究者もいる。形態上は古生代の魚類の特徴の多くを備えるため、硬骨魚類より原始的なグループと考えられたこともある。しかし、軟骨魚類にはいくつかの著しく特殊化した特徴があり、現在では両者は別個に独自の進化をしたものと考えられている。
内部骨格が軟骨からなること、頭蓋骨が一続きの軟骨の箱で、多くの骨でできていないこと、歯が何層にも並び、一部の作用歯が損傷すると内層の歯がすべて作用歯になって入れ換わること、普通、鰓孔(さいこう)が数対(つい)あること、各鰭条(きじょう)が角質鰭条で、分節しないこと、うきぶくろまたは肺がないこと、鱗(うろこ)は退化したものを除くと歯と同じ構造の楯鱗(じゅんりん)であること、腸の内面に螺旋(らせん)弁があり、後端に直腸腺(せん)が発達すること、尾びれは異尾であること、雄には腹びれの内縁に大きな交尾器があり体内受精をすること、などが特徴である。板鰓類は各鰓裂が別々に体表に開き、脊索が椎体ごとにくびれるのに対して、全頭類では各鰓裂が共通の1鰓孔によって体表に開き、脊索が終生円筒状であることで異なる。
軟骨魚類は普通は交尾をして体内受精をする。生殖方法は卵殻に包まれた卵を産む卵生と、胎仔(たいし)を産む胎生(従来、卵胎生といわれていたものを含む)がある。日本の魚類研究者の仲谷一宏(なかやかずひろ)(1945― )による2016年(平成28)の定義、および仲谷ほかによる2020年(令和2)の定義によると、卵生には3様式がある。
(1)短期型単卵生 左右の輸卵管に1個ずつ卵殻卵をもち、すぐに産卵する(トラザメやネコザメなど)。
(2)保持型単卵生 左右の輸卵管に1個ずつ卵殻卵をもち、胎仔が一定の大きさになるまで保持してから産卵する(ナヌカザメ属のサラワクナヌカザメCephaloscyllium sarawakensis)。
(3)複卵生 左右の輸卵管に数個の卵殻卵をもち、順次産卵する(ナガサキトラザメ属、ヤモリザメ属の一部など)。
卵殻の形は、螺旋形(ネコザメ)のものや、長方形で四隅に巻きひげ(トラザメ、ナヌカザメ)や棘(とげ)(大部分のガンギエイ科)をもつものから何ももたないもの(トラフザメ)までさまざまである。卵殻の付属物は海藻や岩などに卵を固定するのに役だつ。
同様の定義によると、胎生には5様式がある。
(1)卵黄依存型 自身の卵黄だけで成長する(アブラツノザメなど)。
(2)粘液組織栄養型 子宮から分泌される粘液物質を吸収する(ホシザメなど)。
(3)子宮ミルク型 子宮壁から分泌される脂質栄養物(子宮ミルク)を吸収する(妊娠初期のホホジロザメ、アカエイ、トビエイ類など)。
(4)食卵型 子宮に補給される無精卵を食べて成長する(ネズミザメ目、チヒロザメなど)。
(5)胎盤型 臍(へそ)の緒(臍帯(さいたい))で胎盤とつながる(メジロザメ科、シュモクザメ科など)。
軟骨魚類には、最大体長がもっとも小さい30センチメートル前後のツラナガコビトザメ属から、全長が18メートルにも達する大形のジンベエザメやそれに次いで大形のウバザメなどがいる。これらの大形種はプランクトンを主食にするが、多くの種が肉食性で、魚類、ウミガメ、海獣、軟体類、甲殻類などを、1週間に平均して体重の3~14%ほど食べる。
いくつかのサメ類は人間を攻撃することがある。被害の多い順にホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメCarcharhinus leucas、オオセ類、シロワニ、カマストガリザメC. limbatus、アオザメ類、シュモクザメ類、ハナザメC. brevipinna、クロヘリメジロザメC. brachyurus、ヨシキリザメ、ツマグロC. melanopterus、ヨゴレ、コモリザメGinglymostoma cirratum、ニシレモンザメNegaprion brevirostrisなどである。とくに前3種のホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメは突出して多い。ギンザメ類の背びれの棘や輸卵管には毒があることが知られている。