木材に穴をあけたり、割ったり、削ったりする道具。歴史上、登呂(とろ)遺跡出土の木材には、のみでの加工の痕跡がみられ、法隆寺造営では数種類ののみが使われていた。古代ののみのほとんどが両刃と袋柄(ふくろえ)であった。木材の製材にのみを使って打ち割る方法がなされていて、片刃より両刃のほうが割りやすかったからであると考えられる。15世紀後半ごろ大鋸(おが)による挽割(ひきわり)製材が普及しだし、両刃からより精密な加工に適した片刃に変わっていった。
のみは、使い方により、たたきのみと突(つき)のみの2種類に大きく分けられる。たたきのみは玄能(げんのう)でたたいて掘り、突のみは突いて表面を削る。だが、刃先の形や刃幅の寸法によって、驚くほど多彩な種類があり、のみこそが大工道具のなかで最多の点数を誇っている。たたきのみは使う目的に応じ、刃先の幅や首の長さ、柄の長さの寸法にくふうが施される。たとえば柱や梁(はり)などの大きな構造材を掘る本たたきは首が長く、道具も頑丈なつくりである。これに対して大入(おおいれ)のみ(追入(おいれ)のみ)は繊細な加工を要する造作(ぞうさく)材に使うから、刃先が薄く首も短い。さらに、刻む形により丸のみ、蟻(あり)のみ、鏝(こて)のみ、向待(むこうまち)のみ(向う区のみ)など異なる刃形を使い分ける。
のみの構造は、穂(穂先=首の金属部分)、口金(穂と柄の装着部分)、柄(木製部分)、冠(かつら)(たたきのみの柄の末端部分)で構成されている。のみの裏には、裏透(うらすき)といってくぼんでいるところがある。裏透とは、片刃の刃物の裏側を削り取った部分で、これがあることで研ぐ面積が少なくなり研ぐのが楽になるし、また裏面が平らに研げる。裏面が平らでなければ、まっすぐに掘れなくなってしまう。
木柄(もくえ)の装着形式には、茎(なかご)式と袋式がある。茎式は、穂部分の端部(茎)を柄に挿入した形式で、袋式は、穂部分を袋状につくり柄を挿入した形式である。15世紀ごろ、のみの構造・形状も、茎式・袋式併存、両刃・片刃併存から、柄を装着する部分が茎式で、刃部断面が片刃のものへ統一されていったと考えられる。
のみの種類は、20世紀前半には、構造材加工用としてたたきのみ・突のみの2種17点、造作材加工用は大入のみ・向待のみ・鎬(しのぎ)のみ・平鏝のみ・掻出(かきだし)のみ・打出のみの6種24点、接合材打込穴加工用は込栓(こみせん)穴掘のみ・平鐔(ひらつば)のみ・丸鐔のみの3種3点、丸太材加工用は丸のみの1種5点で計12種49点あった。