硬骨魚綱スズキ目キントキダイ科に属する海水魚。伊豆諸島、土佐湾、南西諸島、東シナ海、台湾南部、フィリピン、パプア・ニューギニア、オーストラリア北東岸を経てサモア諸島までの西部太平洋に分布する。体は卵形で体高が高く、側扁(そくへん)し、体長は体高の1.8~1.9倍。尾柄(びへい)は低くて短く、頭長は尾柄高の3.1~3.6倍。目はきわめて大きく、頭長の2分の1より大きい。両眼間隔域は狭くてくぼむ。口は大きく斜位で、上顎(じょうがく)の後端は瞳孔(どうこう)の前縁をわずかに越える。上下両顎に幅の広い絨毛(じゅうもう)状歯帯があり、上顎の外列歯はいくぶん大きい。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨にも絨毛状の歯帯がある。主鰓蓋骨(しゅさいがいこつ)の縁辺は円滑で、棘(きょく)が1本ある。前鰓蓋骨の下縁と後縁にやや強い鋸歯縁(きょしえん)があり、隅角(ぐうかく)部に小さい棘が2本ある。間鰓蓋骨と下鰓蓋骨の縁辺に弱い鋸歯がある。鰓耙(さいは)は槍(やり)形で、鰓葉より長い。全鰓耙数は23~25本。体と頭部ははがれにくいやや大きな櫛鱗(しつりん)で覆われる。鱗(うろこ)の後縁の棘は細長く櫛(くし)状に並び、先端でとがる。吻(ふん)、目の周り、両唇および前鰓蓋骨は無鱗。側線有孔鱗数は30~32枚。背びれは10棘11~12軟条で、第4棘または第5棘が最長。軟条部基底長はきわめて短く、棘部基底長の半分以下。臀(しり)びれは3棘11~12軟条で、第3棘が最長。尾びれの後縁はやや丸い。腹びれは臀びれ始部に達し、もっとも内側の軟条は鰭膜(きまく)で体側に付着する。体は淡赤黄色で、10本以上の暗赤色の横帯がある。多くの垂直の棒状の同色の斑紋(はんもん)が頭部と体側の横帯の間にある。背びれと臀びれの軟条部縁辺、腹びれの縁辺、および尾びれの後縁は黒い。体長12.3ミリメートルの稚魚では体が丸くて、頭が大きいこと、前鰓蓋骨棘は太くて長いこと、各ひれの棘は強大で、棘の前縁に鋸歯がないことなどの特徴をもつ。成魚は水深100~240メートルの岩礁域やその近くの砂泥底にすみ、釣り、延縄(はえなわ)、底引網でとれるが、漁獲量は少ない。最大全長は34センチメートルほどになるが、20センチメートル前後のものが多い。塩焼きや煮つけにする。
当初は、南西諸島からとれた個体が1973年(昭和48)に新種、P. multifasciataとして記載されたが、1988年にセレベス島から知られていた本種と同種とされた。