国や地方自治体が一般会計の歳入不足を補うために発行する赤字国債や赤字地方債の総称。発行して調達した財源は社会保障関係費、人件費、事務費など毎年継続的に支出される経常・義務的経費にあてる。一般に国や地方自治体の借金である公債には、赤字公債と建設公債がある。建設公債が道路、橋、水道、学校などの建設に充当されて後世に資産を残すのに対し、赤字公債は後の世代に借金のみを残すため、両者は厳密に区別されている。国が発行する赤字公債は特例法に基づく赤字国債(特例国債)であり、医療、年金などの社会保障費のほか、国家公務員の人件費などにあてられる。赤字地方債には臨時財政対策債、減収補填(ほてん)債、退職手当債などがあり、地方公務員の人件費のほか、生活保護や児童手当の負担金などに使われる。なお、赤字公債という用語は、赤字国債と同義で使われることがある。
第二次世界大戦の戦費を調達するために発行された膨大な戦時国債が戦後の激しいインフレーション(インフレ)を招いたとの反省から、戦後、国や地方自治体が安易に公債を発行しないよう法的制約がなされた。財政法は国債発行を原則禁止し、但書で建設国債の発行のみを認めている。地方財政法も公共施設を建設する財源を除き、地方債で財源をまかなうことを原則禁じている(非募債主義)。しかし、石油ショックで税収が落ち込んだ1975年(昭和50)、国は本格的な赤字国債発行に踏み切り、以後、バブル経済による税収増加期(1991~1993年度)を除いて毎年赤字国債を発行。1年限りの特例法制定を必須(ひっす)とする仕組みも2012年(平成24)に、複数年度にまたがって発行可能な特例法制定を可能とした。地方財政法でも、赤字地方債の発行は厳格に規制されてきたが、地方財政の悪化と国が交付する地方交付税財源の不足から、2001年度、地方での通常収支の不足を補填する臨時財政対策債の発行が認められ、赤字地方債が累増する結果を招いた。国と地方の長期債務残高(借金)は2021年度(令和3)末に1212兆円に達する見通しで、この過半は赤字公債が占め、財政悪化の主因となっている。