花粉に対するアレルギー反応により、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎が引き起こされる現象。おもな症状は、鼻ではくしゃみ、鼻水(鼻漏)、鼻づまり(鼻閉)、眼(め)ではかゆみである。花粉が鼻腔(びくう)粘膜、結膜に付着することにより発症するため、原因となる花粉が飛散する季節にのみ症状がみられ、「季節性アレルギー性鼻炎」ともいわれる。
日本において原因となる花粉でもっとも多いのはスギ花粉であり、2019年(平成31)の調査では全人口の39%の人に症状がみられるとされているものもある。どの季節に症状がみられるかによって、原因となる花粉の見当をつけるが、スギは2~4月、ヒノキは3~5月、カモガヤは5~6月、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラは8~10月、シラカンバは4~6月がおもなピークである。地域による差もあり、スギは北海道、南九州、沖縄を除く全国でみられ、シラカンバはおもに北海道でみられる。
対処法としては、花粉が鼻や眼に付着しないように、マスクやゴーグルをすることなどがある。スギ、ヒノキの花粉は遠くまで飛散するため、森や林に行かなくても影響がみられるが、雑草の花粉は飛散距離があまり長くないため、生えている場所に行くことを避けるという対策も有効である。
花粉症がある場合に、果物や野菜に含まれる類似成分に対してアレルギー反応がおこることがある。口の中やのどに限局したかゆみや違和感である場合には、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)といわれる。また、これは花粉症のある人にみられる現象であるため、花粉‐食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome:PFAS)ともよばれている。
花粉症の薬物治療では、おもに内服薬と点鼻薬、点眼薬が用いられる。内服薬としては、くしゃみ、鼻水、眼のかゆみに対しては抗ヒスタミン薬、鼻づまりに対しては抗ロイコトリエン薬がある。点鼻薬はステロイド薬が中心である。点眼薬は抗ヒスタミン薬、メディエーター遊離抑制薬が中心である。症状が強い場合にはステロイド点眼薬、免疫抑制点眼薬を選択できるが、ステロイド点眼薬は眼圧の上昇に注意が必要である。免疫療法として、スギ花粉抗原エキスを舌下または皮下に繰り返し投与することで抗原に慣れさせる方法があり、原因に対する根本的な治療法となりえる。