学部をもたない、大学院だけの大学。独立大学院ともよばれる。通常、大学院は学部を基礎とするが、学部の枠にとらわれずに学際領域の研究や人材育成をするため、学校教育法(昭和22年法律第26号)第103条に「教育研究上特別の必要がある場合(中略)、学部を置くことなく大学院を置くものを大学とすることができる」と規定されている。博士課程前期(修士)2年と後期(博士)3年の5年間一貫教育をとる大学院大学のほか、修士課程2年のみのもの、法科大学院のように3年制のもの、1年で修士課程を履修可能なものまで多種多様である。取得できる学位は修士号、博士号のほか、専門職大学院では修士号と同等な専門職学位を授けられる。中山素平(なかやまそへい)ら財界の要求で、1982年(昭和57)に開学した私立の国際大学(新潟県)が第1号である。国立では、総合研究大学院大学(1988年設置)、北陸先端科学技術大学院大学(1990年)、奈良先端科学技術大学院大学(1991年)、政策研究大学院大学(1997年)の四つがあり、公立では情報科学芸術大学院大学(2001年)、東京都立産業技術大学院大学(2006年)の二つがある。私立では、国際大学や沖縄科学技術大学院大学(2012年)のほか、経営、会計、IT、ファッションなど10を超える、学部をもたない専門職大学院がある。海外ではフランス国立行政学院(ENA)などが大学院大学に相当する。なお広義には、東京大学や京都大学など大学院重点化を行った大学を含める考え方もある。
第二次世界大戦後、日本の大学院は旧帝国大学などの研究機関としての役割を担ってきたが、科学技術の進展、国際化による頭脳流出、学際的研究の多様化などに対応するため、1974年の大学設置審議会(現、大学設置・学校法人審議会)が独立大学院の必要性を答申。1976年に学校教育法を改正し、1982年に国際大学が開設された。1990年代には技術革新、グローバル化、多様化などに対応できるよう、大学院の設置基準を弾力化し、1991年(平成3)に大学審議会(現、中央教育審議会大学分科会)が2000年(平成12)までに大学院生を倍増させる必要があると報告。2003年度に専門職大学院を制度化し、大学院大学の新設に拍車がかかった。しかし乱立気味のうえ、募集定員割れなどから、2010年以降、統合(日本教育大学院大学と星槎(せいさ)大学など)や閉校(LCA大学院大学、映画専門大学院大学など)が相次いだ。