物質中に電離を起こす電離放射線が人体に当たることをさす。
放射線被曝(ひばく)の形態を分類すると、外部被曝、体表面汚染、内部被曝の3種類がある。
外部被曝は、放射線源が体の外にあり、体外から放射線を受ける状態である。透過力の強い放射線ほど深部臓器にまで影響を及ぼすが、透過力の弱いものでは、おもに皮膚および皮下組織といった浅い部分への影響にとどまる。たとえばエネルギーの低いα(アルファ)線は、皮膚の基底細胞等の細胞に達しないため、外からの被曝は人体に影響を与えない。外部被曝は、大まかに全身被曝と局所被曝に分けられる。全身被曝の場合でも、ほとんどの場合、多く被曝する部位と相対的に少なく被曝する部位があり、不均等被曝となる。
体表面汚染は、人体の表面に放射性物質が付着した状態で、放置すると皮膚を中心に被曝が続く。またそこから汚染が拡大する危険性もある。このため除染が必要である。
内部被曝は、体の中に放射性物質が入り込んだ状態で、そこから出てくる放射線で被曝が続く。取り込まれた放射性物質の体内での動き方(挙動)によって影響や症状が変わり、特定の臓器に集積すると、その臓器による症状が中心となって現れる。たとえば、放射性ヨウ素は甲状腺(せん)に集積し、線量が多い場合、甲状腺がんの発症を増加させる。体内に入った放射性物質は、物理学的に崩壊して時間とともに量を減らしていく。さらに、代謝によって体外に排泄(はいせつ)されていく。このため、体内の放射性物質の量は、新たな取込みがなければ、時間とともに減っていく。
また放射線被曝は、時間経過により急性被曝と慢性被曝に分けられる。一般に、同じ被曝線量であれば、ゆっくり被曝する慢性被曝のほうが生体に対する影響が小さい。
被曝には、線源の種類によって、自然放射線源によるものと人工線源によるものがある。人々は普通に日常生活を送っていても、宇宙から届く宇宙線、食物中の放射性物質や、大地、地中から出てくるラドンガス等の自然放射線源によりある程度被曝している。また、国際放射線防護委員会(ICRP)は、人工線源による被曝を公衆被曝、職業被曝、医療被曝に分類している。