日本の安全保障上、重要な土地の利用を規制する法律。正式名称は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(令和3年法律第84号)で、「土地規制法」「土地利用規制法」などともよばれる。2021年(令和3)に成立・施行。外国資本による不透明な土地買収に歯止めをかけるねらいがある。自衛隊、海上保安庁、アメリカ軍基地、原子力発電所などの周囲約1キロメートルや国境近くの離島を注視区域に指定し、政府が土地や建物の利用実態、所有者の氏名・国籍などを調査できる。とくに自衛隊司令部など重要性が高い施設周辺や特定国境離島等は特別注視区域に指定し、一定面積以上の土地売買に事前届出を義務づけた。政府は防衛関係施設の周辺など約600か所が規制対象になると説明している。また閣議決定した基本方針で、基地周辺に風車を建てるなどして電波を妨害する行為など「重要施設に対する機能を阻害する行為」を例示し、中止を勧告・命令できるようにした。従わなければ2年以下の懲役または200万円以下の罰金を科す。政府は2022年4月に内閣府に担当部署を設け、従来、複数部署が管理していた重要施設周辺の土地に関する情報を一元化し、監視の実効性を高めると説明している。
2010年(平成22)ごろから、長崎県対馬(つしま)の自衛隊基地周辺を含む島の一部や北海道の山林などを外国資本が買収しているとの報道が相次ぎ、そうした事態に対処するために法制化された。しかし、そもそも外国資本による買収という実態自体がないとの指摘や、過度な私権制限につながりかねないとの批判が日本弁護士連合会やリベラル団体などからあがっている。