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日本大百科全書(ニッポニカ)

轡

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轡
くつわ

ウマの口に取り付け、手綱(たづな)をつけてウマを御する馬具。日本語の起源は口輪(くちわ)から転訛(てんか)したとする説がある。古くは「くつばみ」といい、手綱のことを「くつわ」ということもあった。轡のことを勒(ろくはみ)や銜(くつわはみ)という語を用いることがある。現在の轡は、金属製、ゴム製、ナイロン製などがある。轡には小勒銜(しょうろくばみ)と大勒銜の2種類がある。小勒銜は2個の棒状の「はみ身」とその先端にはみ環(かん)(引き手)があり、はみ環に手綱がつけられる。大勒銜は「はみ身」「はみ枝」「轡鎖(くつわくさり)」の3部からできている。はみの部分はウマの口腔(こうくう)の切歯(せっし)と前臼歯(ぜんきゅうし)との間の歯のない部位(槽間縁(そうかんえん))に取り付ける。

 人類は最初、ウシと同じように鼻環をウマに取り付けていたが、ウマの口腔の解剖学的構造を巧みに利用して轡を発明した。轡は、初めは布、綱、革紐(ひも)などが用いられていた。最古の固定した轡としては、紀元前2000年ころ鹿角(ろっかく)製のものが出現している。その後、青銅製から鉄製になっている。日本にはアジア大陸から鉄製の轡が渡来している。古墳時代の出土品には、「はみ身」に鏡板がついていて、当時の優れた技術を知ることができる。

[松尾信一]

©SHOGAKUKAN Inc.

メディア

馬形鏡板付轡

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