化石燃料の大量使用によって大気中に放出された二酸化炭素(CO2)などが地球から宇宙への熱の放出の一部を留めることで地球大気の温室効果が進み、気温が上昇すること。大気中の水蒸気は別として、温室効果の主役はCO2であるが、メタン、フロンなど温室効果が大きい他のガスもあり、まとめて「温室効果ガス」とよばれる。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書(第6次評価報告書第1作業部会報告書、2021年)によれば、産業革命(工業化)以降から最近までの気温上昇は約1.1℃とされる。また、温室効果ガスの排出が大幅に削減されない限り、21世紀中に地球温暖化による気温上昇は1.5℃および2.0℃を超える、とIPCCは分析している。
温室効果と地球温暖化は古くから議論されていたが、1980年代に経験した世界的な高温という異常気象に関連して、温室効果と大気中のCO2増加の問題が国際政治の舞台に登場してきた。一方、地球温暖化の科学的評価の問題では、IPCCによる評価などを中心に世界的な議論と検討が進められてきた。前出IPCCの第6次評価報告書では、「人間の影響が大気、海域および陸域を温暖化させてきたことに疑いの余地はない」という従来以上に踏み込んだ評価を下している。また、2019年の大気中のCO2濃度は410ppmに達しており、工業化前より47%濃度が上昇した、とも指摘している。
なお、地球温暖化については、温室効果ガス排出による影響のほかに、長い時間スケールで地球が温暖化するか否かを示す気候変動の要因として、太陽活動によって地球大気が受けとる日射量の微変動もとりあげられている。そのほかに大気中に浮遊するエーロゾル(煙霧質。固体または液体の微粒子。エアロゾルともいう)による影響(日射の大気圏外への再反射による大気冷却やエーロゾルによる雲の生成の形や雲量への影響)もあり、大気中のエーロゾルの増減も気候変動の議論では注視されている。さらに、地表面に関する現象としては森林、砂漠、雪氷表面積の増減なども、大気と地表面との熱の授受の変動に関連し、気候変動に影響する要因となっている。これらの要因はすべて全地球的な詳しい観測が必要であり、今後の気候変動・地球温暖化の科学をめぐる議論でさらに分析を深めていく必要がある。
化石エネルギー(石炭、石油、天然ガス等)の燃焼などによって大気中に排出されるCO2等のガスが増加することにより、温室効果が発生する。その結果、地球の温度が上昇し、海面上昇や異常気象の発生など、地球全体および人類にとっての重大問題が惹起(じゃっき)されると考えられる諸問題のこと。
この問題が世界的に大きな注目を浴びるようになったのは、1988年のトロント・サミットで議題の一つとして取り上げられてからであり、同年にはIPCCが設置されて各国政府間での議論が急速に展開されるようになった。
このような背景もあって、1992年6月ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された環境と開発に関する国連会議(地球サミット)で、温室効果ガスの排出量を20世紀末までに1990年レベルに戻すことを目標として各国政府間で合意がなされ、世界155か国の代表が気候変動枠組み条約に署名した。同条約に基づき、締約国会議(COP)が開催されるようになり、1997年(平成9)第3回会議(COP3)が京都で開催され、2010年前後の温室効果ガスの法的拘束力をもつ削減目標などを定めた京都議定書が採択された。世界で初めての地球温暖化防止のための国際的枠組みとなった京都議定書だが、拘束力をもつ排出削減が課せられたのは日本やヨーロッパ連合(EU)などごく一部の国に限られた。その後、2020年以降のより長期を目標にした国際合意の形成が目ざされ、2015年のCOP21(パリ開催)で、気温上昇を2℃より十分低くし、1.5℃に抑える努力をすることを目ざすこと、各国が自発的に温暖化ガスの排出削減目標を作成して提出することを定めた「パリ協定」が成立した。パリ協定には200近い国が参加することになった。その後、世界的な異常気象の頻発などもあって気候変動への対処がより重要視されるようになり、気温上昇を1.5℃に抑えるために温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目ざす政策が世界の関心を集め、2020年には日本、EU、アメリカ、中国など主要国がカーボンニュートラルを目ざす方針を発表している。また、2021年に開催されたCOP26に向けて、インドネシア、サウジアラビア、ロシア、オーストラリア、インドなども、カーボンニュートラルの目標を発表した。