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ペルー北海岸の、モチェ、チカマ、ランバイェッケ、ヘケテペケの谷を中心に栄えた先(プレ)インカ期文化。伝説によれば、紀元12世紀ごろ、海から筏(いかだ)でやってきた征服者がランバイェッケの王朝を創設し、のちモチェにも新王朝が誕生した。そして14世紀に後者が前者を征服し、チャンチャンを首都として、北はチラ川から南はスペに至る広域を支配する王国を建設した、という。集落としては、チャンチャンのほか、エル・プルガトリオ、パカトナムーなど大規模なものが多く、またクンブレの大運河、砂漠を貫く道路などの土木工事の跡も残っている。土器は、還元炎で焼き、磨き上げられた黒色の象形壺(つぼ)によって代表されるが、赤色のものもある。器型は鐙型(あぶみがた)壺、双胴壺、人面象形壺、橋型注口壺などが主体であり、生活文化や動植物相が多彩に表現されている。型入れによる量産が行われ、前代のモチェ文化の土器に比して個性に乏しい。ただし、少数ではあるが、入念につくられ、王朝的な気品をたたえた作品もある。そのほか、木の儀仗(ぎじょう)、王族の木製の輿(こし)、容器、皿、儀礼用ナイフ(トゥミ)などの黄金製品、青銅の儀礼用具など注目すべき製品が多く残っている。チムー王国は、15世紀後半、クスコのインカ帝国によって征服されたが、その政治組織や技術は、インカ人に大きな刺激を与えたといわれている。