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うつ病などの抑うつ障害群と双極性障害を総称する用語である。アメリカの診断分類である『精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)』は第4版改訂版までは、これらが気分の変調を主症状とする近縁の疾患であるとして「気分障害」と総称していた。しかし、近年の遺伝学的、生物学的な研究から、双極性障害群が抑うつ障害群よりも精神病性障害群に近いと考えられるようになり、第5版(DSM-5)では「気分障害」の総称が廃止され、「双極性障害または関連障害群」と「抑うつ障害群」に分けられた。
一方、世界保健機関が策定した『国際疾病分類第11回改訂版(ICD-11)』では、臨床現場で有用であるとして、抑うつエピソードだけが現れる抑うつ症群と、抑うつ状態と躁(そう)・軽躁状態の両方のエピソードが認められる双極症群を含める「気分症群」の枠組みを残した。
ICD-11の抑うつ症群の分類には、「単一エピソードうつ病」「反復性うつ病」「気分変調症」「混合抑うつ不安症」「抑うつ症、他の特定される(抑うつ症状があり機能障害を伴っているものの、抑うつ障害群の診断基準のいずれにも完全には満たさない場合にその特定の理由を添えて診断が下される抑うつ症)」「抑うつ症、特定不能(病因を特定できない抑うつ症)」と「気分症、他の特定される」「気分症、特定不能」「月経前不快気分症」が含まれる。また、双極症または関連症群の分類には、「双極症Ⅰ型」「双極症Ⅱ型」「気分循環症」「双極症または関連症、他の特定される」「双極症または関連症、特定不能」が含まれている。