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日本大百科全書(ニッポニカ)

モーリシャス

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モーリシャス
もーりしゃす
Republic of Mauritius英語
République du Mauriceフランス語

アフリカ南東部、マダガスカル島東方900キロメートルのインド洋上に浮かぶモーリシャス島を中心とする島嶼(とうしょ)国。モーリシャス島東方550キロメートルのロドリゲス島および北方のサンゴ礁群(アガレガ諸島、カルガドス・カラホス礁など)を含む。面積1979平方キロメートル、人口123万7000(2011センサス)、127万2000(2020世界銀行)、人口密度は1平方キロメートル当り643人であり、アフリカでもっとも人口の稠密(ちゅうみつ)な国の一つである。首都はモーリシャス島北西岸のポート・ルイス。正式名称はモーリシャス共和国Republic of Mauritius。

[寺谷亮司]2022年3月23日

自然

国土の91%を占めるモーリシャス島は、フランス領レユニオン島からセイシェル諸島に連なるマスカリーン海嶺(かいれい)上に噴き出した火山よりなる古い火山島である。全体に溶岩に覆われた緩やかな高原地形が卓越するが、島の中央部のカルデラ壁の一部や孤立峰の岩山などの特異な山地景観もみられる。沿岸にはサンゴ礁が発達する。気候は亜熱帯海洋性であり、南東貿易風に影響され、東岸や中央高原地域が多雨地域となる。年降水量は、最多の内陸部では5000ミリメートル以上に達するが、西岸では約750ミリメートルに減じ、塩田景観が広がる。気温は、年間を通じ20℃台前半が多い。月平均気温は、海岸部では夏季(12~3月)は約27℃、冬季(6~9月)は約22℃である。標高の高い内陸部ではさらに気温が2~7℃低い。夏季の日中でも、日陰に入れば涼しく、夜間は急に気温が低下するので不快なほど暑くはない。また、1~3月にはサイクロンが来襲して大きな被害をもたらすことがある。国土の土地利用状況をみると、農耕地45%、森林・放牧地28%、都市的土地利用24%などである。農耕地の90%はサトウキビ畑であり、自然植生は南西部のブラック・リバー渓谷付近にわずかに残存するのみである。絶滅動物のシンボルとされるハト目の大鳥ドードーがかつて存在していたことで知られるが、オランダ人入植後の17世紀後半に同鳥は絶滅した。

[寺谷亮司]2022年3月23日

歴史

長い無人島時代にも、アラブ人、マレー人、アフリカ人の一時的渡来はあったと思われる。モーリシャス島「発見」の最初の記録は、10世紀のアラブ人によるものである。1511年にポルトガル人が上陸し、1598年にはオランダ人が来島して、オランダ総督のマウリッツにちなんでモーリシャス島と命名した。オランダ人はその後、マダガスカルなどから奴隷を移入し、バタビア(現、ジャカルタ)からサトウキビを導入したが、1710年に撤退した。1715年にフランス人が本格的な植民を開始し、1735年に総督に就任したマエー・ド・ラブルードネBertrand-François Mahé de La Bourdonnais(1699―1753)は植民地政府首都ポート・ルイスの建設、ポート・ルイス港の整備をはじめ、多くの開発・産業・治安政策を実施し、国家的基礎を築いた。しかし、ナポレオン戦争中の1810年にイギリスが島を占領し、1814年のパリ条約でイギリスの領有権が確定した。イギリスは、1833年の奴隷制度廃止法による奴隷解放ののち、アフリカ人にかえてインド人の年期契約労働者を導入した。1860年ごろには、インド人は全人口の3分の2を超える20万人に達した。第二次世界大戦後の1947年に自治が認められ独立運動が高まったが、インド人とクレオール(フランス人と黒人との混血)との対立から難航した。しかし、1965年のロンドンでの憲法制定会議で完全な内政自治権が委譲され、1968年3月にイギリス連邦内の自治国として正式に独立を達成した。

[寺谷亮司]2022年3月23日

政治

独立後の初代首相には、植民地政府の主席官僚であったS・ラムグーラムSeewoosagur Ramgoolam(1900―1985)が就任した。インド系住民を基盤としてラムグーラムが率いるモーリシャス労働党(MLP:Mauritian Labour Party)は、単独あるいは連立して政権を維持したが、1982年の総選挙ではクレオール系のモーリシャス闘争運動(MMM:Mauritian Militant Movement)とモーリシャス社会党(PSM:Mauritian Socialist Party)によるジュグノートAnerood Jugnauth(1930―2021)左派連合政権が誕生した。しかし、MMMの内紛、PSMの離反などにより、1983年同政権は崩壊し、首相のジュグノートはMMMを脱退しモーリシャス社会主義運動(MSM:Militant Socialist Movement)を結成して、同年の総選挙で勝利した。ところが長期間のジュグノート政権に批判が高まり、1995年12月の総選挙で与党MSMは議席を完全に失い、MLPとMMMとの連立内閣が成立する。その結果、MLP党主で初代首相の息子のN・ラムグーラムNavinchandra Ramgoolam(1947― )が首相となった。しかし、1997年7月に連立内閣は崩壊し、MLPによる単独内閣となった。2000年9月の総選挙ではMSMとMMMが連合を組んで過半数を獲得し、ジュグノートがふたたび首相になった。2005年7月の総選挙では、MLP主導の政党連合である社会同盟(AS:the Alliance Sociale)が勝利し、N・ラムグーラムが首相に返り咲き、2010年5月の総選挙でも再任された。

 2014年の総選挙では、N・ラムグーラム首相が打ち出した憲法改正を行い、大統領の権限を強化する案に対する国民の信任が得られず大敗し、再びジュグノート政権が発足した。2017年1月、ジュグノートは首相職を辞し、MSM党首に就任していた息子のP・K・ジュグノートPravind Kumar Jugnauth(1961― )が後継の首相に就任した。2019年11月の総選挙では与党連合が勝利し、P・K・ジュグノートは再任された。

 モーリシャスは、1992年に立憲君主制から大統領を元首とする共和制に移行したが、政治の実権は首相にある。大統領は国民議会で選出され、任期は5年である。国民議会は一院制で議席数は70(うち8議席は少数民族代表)、議員任期は5年である。外交は非同盟を基調とするが、アジアとアフリカの掛け橋として、とくにインド、中東諸国、東南アジア諸国、最近では中国との関係の緊密化が目だつ。

 なお、モーリシャス島北東1900キロメートルのチャゴス群島内のディエゴ・ガルシア島は、独立直前の1965年に島民の強制移住により軍事基地化されてイギリスに割譲させられた。1966年にアメリカ合衆国へ50年契約で貸与され、2016年に使用協定の期限を迎えたが、終了の通知がなかったため、2036年まで貸与が延長された。モーリシャス政府はイギリス政府に対して領土の返還要求を行っており、領土問題が係争中である。

[寺谷亮司]2022年3月23日

経済・産業

独立以後の経済成長をみると、アフリカ諸国としては異例ともいえる着実かつ目覚ましい経済発展を遂げてきた。年平均GDP成長率は、1975年と1980年を除けば毎年ほぼ年率3.5%以上の高率を示す。経済成長を支えてきたのは輸出の堅調な増加である。かつては砂糖が唯一の貿易品であったが、1970年代後半以降は輸出加工区製造業製品のシェアが急増し、2021年時点では約7割に達する。おもな輸出相手国はイギリス、フランス、アメリカ合衆国、南アフリカ共和国、おもな輸入相手国はインド、中国、南アフリカ共和国、フランスなどである。

 通貨はモーリシャス・ルピー。

 基幹産業は砂糖産業、輸出加工区製造業、観光産業である。かつての主要産業であったサトウキビ農業が農耕地の約9割を占めるが、他の砂糖生産国との競争状況は厳しく、その産業経済的地位は大幅に低下した。製糖工場数も、1960年以降約20工場で推移してきたが、2000年以降の合理化によって2021年時点では4工場に集約された。輸出加工区は1971年に初めて設立され、以後モーリシャス全島各地に工業団地の立地が図られた。ところが、立地企業数は1980年代後半、雇用者数は1990年代前半、輸出額は2001年以降に減少傾向がみられ、輸出加工区全体の伸び悩みが顕著となってきた。この理由としては、繊維・縫製企業などの高度化していない業種に偏ってきたことを指摘できる。

 近年、島中央部のエベネ地区にビジネスパークが設立され、インド資本などのIT企業が集積しつつある。同地区へは、モーリシャス有力企業が、ポート・ルイスから本社を移転する動きもみられる。

 モーリシャスは「インド洋の楽園」とよばれるなど、高級海洋リゾートとしても知られている。外国人観光客数(フランス人が最多)や観光収入は急増しているが、ビーチ保全のための砂の投入によるサンゴへの悪影響、無人島でのゴルフ場建設など、自然環境の悪化が危惧(きぐ)される。2020年7月25日、日本の会社が保有・管理し、運行していたばら積み貨物船わかしおが、モーリシャス島南岸のサンゴ礁で座礁し、大量の重油を流出させた。重油は、モーリシャス島沿岸に到達し、環境保護地区の生態系を破壊して、同国の経済や食料安全保障、健康に深刻な影響を及ぼす事故となった。

[寺谷亮司]2022年3月23日

社会・文化

住民は複雑な植民史を反映してきわめて多様であり、インド人68%、クレオール27%のほかに中国人およびヨーロッパ人がいる。宗教もヒンドゥー教50%、キリスト教32%、イスラム教17%、仏教0.7%と多彩である。公用語は英語であるが、フランス語、クレオール語(フランス語およびバントゥー語、マダガスカル語などとの合成語)が普及しており、インド系住民の間ではヒンディー語が使われている。

 小・中学校からモーリシャス大学まで教育費は無償であり、教育水準は高い。国民のほとんどが英語とフランス語に堪能であることは特筆される。日刊紙には『ル・モーリシアン』などがある。国営のテレビ・ラジオ放送があり、使用言語はフランス語が多い。

[寺谷亮司]2022年3月23日

日本との関係

日本とは1968年(昭和43)に外交関係を樹立した。在マダガスカル日本大使館が業務を兼轄していたが、2017年1月に日本国大使館が開設された。日本へはおもに冷凍魚類(マグロ、キンメダイなど)、衣類、切り花(アンセリウムなど)を輸出し、自動車(乗用車、バス、トラック)を輸入している。在留邦人数は80人(2020)。

[寺谷亮司]2022年3月23日

©SHOGAKUKAN Inc.

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