外国法に基づいて設立された法人。日本法人のなかで、外国人や外国法人の所有する株式の比率が高いために一般に「外資系企業」とよばれているものは、その設立準拠法が日本法である限り、ここでいう外国法人ではない。
日本の法制度上は法人の設立準拠法を基準とし、日本法に基づいて設立された法人を日本法人、外国法に基づいて設立された法人を外国法人として扱っている。外国法人には、外国の会社、公益法人、宗教法人などの社団・財団のほか、外国や外国の行政区画(州など)も含まれる。民法第35条1項は、法律または条約により特別に認許されるものを除き、外国、外国の行政区画および外国会社だけを認許するとしている。この認許とは、その法人格を日本で承認することであり、これらのものは何らの手続も経ることなく日本でその存在が認められ、権利義務の主体となることができる。これに対して、外国の公益法人や宗教法人などは、それを認許することが日本の公益に反するおそれがあるという理由から認許されない。しかし、立法論としては、少なくとも学術、スポーツ振興などを目的とする公益法人は認許すべきであるとの見解が有力である。認許された外国法人は、日本において成立する同種の法人と同一の私権を有する。ただし、外国人が享有することのできない権利および法律または条約中に特別の規定がある権利についてはこの限りでなく、認許された外国法人であってもその私権は制限される(民法35条2項)。認許されない外国法人であっても、代表者さえ決まっていれば、訴訟法上は、権利能力なき団体として当事者能力が認められる(民事訴訟法29条)。会社法第2条第2号は、外国会社について、外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、日本の会社と同種のもの、またはそれに類似するものと定義している。なお、日本に本店を置きまたは日本において事業を行うことを主たる目的とする外国会社は疑似外国会社とよばれる。疑似外国会社は日本において取引を継続して行うことはできず、これに違反して取引をした者は、個人として、取引の相手方に対してその疑似外国会社と連帯してその取引によって生じた債務を弁済する責任を負うとされている(会社法821条)。この規定は、会社法制定時に外国会社による日本でのビジネス活動を阻害するおそれがあるとして国会で問題となり、法務省は日本法の脱法をする悪質な場合だけを対象とすると説明し、そのまま可決された経緯があるが、これについての裁判例はまだない。
認許された外国法人については、例外的に、日本法人とは異なる扱いがされる。たとえば、日本で継続して取引をしようとする外国会社は、日本における代表者を定めなければならず、その設立準拠法などを登記しなければならない(会社法817条1項、933条2項1号)。また、事業活動の内容によっては、外国法人であることを理由に制限を受けることがある。たとえば、鉱業法第17条は「日本国民又は日本国法人でなければ、鉱業権者となることができない」と定めている。なお、日本法人であっても、資本構成や役員の国籍などに関する一定の要件のもとに制限を受けることがある。たとえば、電波法第5条1項は、無線局の免許を与えない者として、「1 日本の国籍を有しない人、2 外国政府又はその代表者、3 外国の法人又は団体」のほか、「4 法人又は団体であって、前3号に掲げる者がその代表者であるもの又はこれらの者がその役員の3分の1以上若(も)しくは議決権の3分の1以上を占めるもの」をあげている。これは、日本法人であっても、その代表者・役員または議決権の3分の1以上が外国人・外国法人によって占められている法人等については、実質的に外国人等の影響を強く受ける結果、有限である電波を利用する無線局の免許を与えないこととするものである(なお、同法5条4項では、社会的な影響力の大きい放送局については、前記の比率が5分の1以上であるときや、外国親会社等の株主等が議決権の5分の1以上を間接的に占めているものには免許を与えないという、いっそう厳しい規制がなされている)。このような法規制は外人法とよばれている。他方、ケイマン諸島、バージン諸島などのタックス・ヘイブン(租税回避地)でペーパー・カンパニーを設立し、税法上、外国に本拠地を置く法人であることのメリットを享受しようとするという状況もみられる。
国際私法上、法人に関する一定の事項については、自然人の場合の本国法や住所地法にあたる法として、従属法を適用するとされている。日本を含め多くの国では、設立準拠法を従属法としている。日本の会社法第933条第2項第1号が外国会社の日本における登記事項として設立準拠法をあげているのは、取引の相手方がその外国会社の設立準拠法を調査できるようにすることによって、取引の安全に資するようにしたものである。
法人の従属法は、法人をめぐる法律問題のうち、株主総会の権限、取締役の責任、監査役制度、株式の性質などの法人の内部関係事項に適用されることについては異論がない。法人の代表者の権限については、法人の内部関係であると同時に外部の相手方との関係でもあるので、設立準拠法によると相手方にとって予想外の結果を招きかねないとの理由から、設立準拠法上は権限がなくても、行為地法によれば権限があるとされるときには権限があるものと扱うべきであるとの見解と、一般の代理人の場合と異なり、法人については登記等の制度が確立しているのであるから、取引相手の側で調査をするべきであって、設立準拠法のみの適用でよいとの見解とに分かれている。