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日本大百科全書(ニッポニカ)

新幹線

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新幹線
しんかんせん

日本の主要都市間を結ぶ、時速200キロメートル以上の高速旅客列車専用の特別な鉄道路線。海外でもShinkansenの名称がそのまま使われている。全国新幹線鉄道整備法(昭和45年法律第71号)には時速200キロメートル以上の鉄道と定義されている。一方、海外の高速列車は時速250キロメートル以上で走行するものと定義されている。

 1964年(昭和39)10月1日、東京―新大阪間に標準軌(1435ミリメートル)の高速旅客列車専用の特別線が営業を開始した。この東海道新幹線が契機となって、専用の高速鉄道線が新幹線と称されるようになった。

 現在、日本には東海道、山陽、東北、上越、北陸、九州および北海道の7線区があり、北陸新幹線金沢―敦賀(つるが)間、北海道新幹線新函館北斗(しんはこだてほくと)―札幌間および西九州新幹線武雄温泉(たけおおんせん)―長崎間が工事中である。また、全国新幹線鉄道整備法によらない、狭軌(1067ミリメートル)の在来線を標準軌に改軌して新幹線との相互直通運転を行う、ミニ新幹線とよばれる山形、秋田の2線区がある。このほかに、東海旅客鉄道(JR東海)が東海道新幹線の将来の輸送需要増および南海トラフ地震への対応として、設計最高時速505キロメートルの超電導磁気浮上方式の超電導リニアで中央新幹線を建設中である。東京(品川)―名古屋間285.6キロメートルの開業予定は2027年、大阪までの延伸は2037年とされている。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

全国新幹線整備計画

山陽新幹線の工事が進むなか、1970年(昭和45)、政府は「全国新幹線鉄道整備法」を制定した。全国7000キロメートルに及ぶマスタープランのうち、東北(東京―盛岡)、上越(大宮―新潟)、成田(東京―成田)新幹線を着工線、東北北海道(盛岡―札幌)、北陸(高崎―富山―大阪)、九州(博多(はかた)―長崎、博多―鹿児島)を整備計画線とした(成田新幹線は1987年に計画失効)。これは、東海道新幹線が予期以上の輸送実績をあげ、早くも償却を完了して黒字に転じ、営業係数(収入に対する経費の割合)50%台のドル箱路線となったことと、安全・高能率な輸送が維持されて、世界的にも注目を集めたことからである。しかし、山陽新幹線開業が遅れたことでもわかるように、そのころから、(1)日本経済の高度成長の終息、(2)高速自動車道路網の急速な発達と自動車保有台数の激増、(3)国内航空路の充実、(4)公害防止・自然保護への世論の盛り上がり、などの要因で、新幹線開設のための莫大(ばくだい)な投資が全国的に有効かどうかについての疑問が浮かび上がってきた。

 1987年4月1日、日本国有鉄道(国鉄)は民営化され、東北・上越新幹線は東日本旅客鉄道(JR東日本)、東海道新幹線はJR東海、山陽新幹線は西日本旅客鉄道(JR西日本)と、それぞれの旅客鉄道会社(JR)が運営を行うことになった。それまでは、新幹線の建設は国鉄および日本鉄道建設公団が調達していたが、JRによる建設は行わないことになり、新幹線施設は一括して新幹線鉄道保有機構が保有したうえで、JR各社に貸し付け、そのリース料と国による公共投資等を組み合わせて新規路線整備の財源を捻出(ねんしゅつ)することとなった。各社の新幹線リース料は、再評価による資産額約8.5兆円を基に30年元利均等払いの条件で算定された。建設費の割合は、JR負担50%(リース料を含む)、国負担35%および地方負担15%であった。

 新幹線鉄道保有機構は、JR3社の上場が視野に入った1990年(平成2)に、各社の経営責任の明確化と運営の自主性強化のため、資産の再々評価を行った。その結果9.2兆円と算定された資産は、翌1991年にJR3社に譲渡された。先の8.5兆円からそれまでのリース料を差し引いた8.1兆円から1.1兆円の価格上昇となり、これが整備新幹線建設の新たな財源となった。8.1兆円は2017年(平成29)上期までに返済されている。1.1兆円は固定金利6.55%の60年間の元利均等償還とされ、既設新幹線譲渡収入として年額724億円を国に返済することとなった。1991年10月に新幹線鉄道保有機構は施設をJR3社に譲渡して解散し、鉄道整備基金が発足した。

 1996年に新幹線のリース料を差し引いた建設費の3分の2を国が、3分の1を地方が負担する新スキームが決まった。これは社会基盤整備の際の国と地方の負担割合にあわせたものであり、前記の新幹線譲渡収入の年額724億円は国の負担分に繰り入れられた。リース料はそれぞれの新幹線の開業により得られる収入、すなわち受益の範囲とすることによって事業者となるJRの負担を軽減した。同時に、整備新幹線運行区間の並行在来線をJRから切り離すことも方向づけられた。鉄道整備基金は1997年10月には船舶整備公団と統合し、運輸施設整備事業団となり、さらに、2003年10月に日本鉄道建設公団と統合し、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(略称、鉄道・運輸機構)となった。

 2004年12月の政府・与党申合せとして、着工5条件を明確にし、既設新幹線の2013年から2017年までの譲渡代金の前倒し分として、財政投融資資金を借り入れて整備財源とした。これらを含め国の負担分とし、建設費からリース料を差し引いたものの3分の2を国、3分の1を地方が負担することとなった。地方負担分は、9割までを地方債とし、地方債の元利償還金の50%(2008年以降は50~70%)までを地方交付税で補助する。5条件とは、(1)安定的な財源見通しの確保、(2)収支採算性、(3)投資効果、(4)JRの同意、(5)並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意である。これにより、北海道新幹線、北陸新幹線、九州新幹線西九州ルート(長崎新幹線)が着工された。西九州ルートは、2021年(令和3)4月に「西九州新幹線」と命名され、2022年2月に開業日が同年9月23日と公表された。

 北陸新幹線高崎―長野間で提案されたミニ新幹線やスーパー特急方式による建設費低減方策は、地元の同意を得られずにフル規格での建設が推進された。

 なお、全国新幹線鉄道整備法は数次の改正を経て、2022年時点では、北海道(青森―札幌)、東北(盛岡―青森)、北陸(東京―大阪)、九州(福岡―長崎、福岡―鹿児島)の5路線の整備を行うこととしている。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

新幹線の運転速度

新幹線は最初、最高時速210キロメートルであったが、2021年(令和3)時点では東海道新幹線が時速285キロメートル、山陽新幹線が時速300キロメートル、上越新幹線が時速240キロメートル、東北新幹線が時速320キロメートル、北陸新幹線、九州新幹線および北海道新幹線が時速260キロメートルとなっている。さらに、JR東日本は時速360キロメートルを目ざして開発を進めている。なお、上越新幹線では1990年(平成2)から1999年まで200系を使用して時速275キロメートルでの運転を行っていた。

 レール・車輪方式による鉄道の世界最高速度記録(時速)は、2007年4月3日にフランスの超高速列車TGV(テージェーベー)-POS(東ヨーロッパ線)をベースにした試験列車V150が出した時速574.8キロメートルで、日本最高速度記録は1996年7月26日にJR東海の試作車両300Xが東海道新幹線の京都―米原(まいばら)間で出した時速443キロメートルである。

 試験で高速記録を出すことができても、営業運転には、騒音、振動および電磁波抑制など、沿線の環境保全が必須(ひっす)であり、そのための技術開発が進められた。また、速度向上に伴い軌道、電車線や車両の保守費も増加する。環境対策のための投資や速度向上による保守費の増加と、収入増加とのバランスで営業運転速度が決まり、日本国内および海外では時速320キロメートルが現時点での一つの壁となっている。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

東海道新幹線の開設

江戸開府以来、日本の交通は江戸と京坂地区を結ぶ東海道が圧倒的に多かった。現代においてもその事情は変わらず、東海道沿線地帯は、人口密度の高い、世界有数の密集工業地帯である。第二次世界大戦以前すでに複線の東海道本線では鉄道輸送の需要に応じきれず、線路の増設を必要としていた。とくに日中戦争が始まってからは、朝鮮半島や中国大陸との人員や物資の交通の必要が高まり、1938年(昭和13)から東京―下関(しものせき)間の標準軌新線が計画されたが、戦況の激化によって実現に至らなかった。日本の鉄道が戦後の荒廃から立ち直り、経済力の伸展とともに、ふたたび東京―大阪間を主とする輸送能力の増強が要求されるようになったのは、1955年(昭和30)ころからである。他の交通手段である高速自動車道路や空港、港湾施設の新設・改良も実施されつつあったが、ことに鉄道線路の増強が必要とされていた。

 1955年5月、国鉄総裁に十河信二(そごうしんじ)(1884―1981)が就任すると、「東海道線増強調査会」が設けられた。調査会の活動が軌道に乗り始めた1957年5月30日、国鉄の鉄道技術研究所(現、公益財団法人鉄道総合技術研究所。略称、JR総研)は、創立50周年記念行事として講演会を開催した。ここで発表されたのは、標準軌の高速電車を研究開発すれば、東京―大阪間を3時間で運転できるという技術者たちの意見であった。技術者たちの自信は国鉄幹部に勇気を与えるとともに、一般世論にも大きな関心を呼び起こした。

 一方、実現を迫られている東海道線の増強について、在来の線路網の一部として狭軌のままとするか、標準軌または広軌とするか、東海道本線と併設するか別線にするか、動力方式はどうするかなど、さまざまな問題点の詳細な調査と検討が進んでいた。この調査結果を基にして、閣議決定による「日本国有鉄道幹線調査会」が運輸省(現、国土交通省)に設置されたのは1957年8月のことであった。当時の国鉄技師長の島秀雄(しまひでお)は、(1)1435ミリメートルの標準軌とし、(2)東京―大阪間を3時間で運転できる高速旅客列車専用線路を建設する、(3)動力は単相交流電化方式を採用する、という方針を運輸省の調査会に提案した。この方針は検討のすえ支持を得て、審議会の答申として建設基準が打ち出された。

 最高時速200キロメートルの高速列車には、全電動車方式の総括制御式編成電車が適していると判断された。その理由は、電気機関車による動力集中方式と比べて、(1)軸重が各車両に分散し平均化するので、軌道の強度が弱くてすみ、建設費・保守費が低下する、(2)高速域から減速して停車させる際に、駆動用の電動機を発電ブレーキとして用いる制動を主にできるので、安全性が向上し、保守上も有利であること、などである。

 開業の目標期限は、1964年の東京オリンピックに置かれた。新設された新幹線総局を中心に、国鉄技術陣は、関連する工業界の協力を得て、総力をあげて研究・開発・設計にあたった。期限が明確化したため、研究・開発の成果のうちから、確実に実行可能な既成技術を中心に組み合わせて、安全確実な新幹線システムが完成した。当初の約1950億円の予算は、逐年修正されて完成までに約3800億円となったが、その間のインフレーションの影響を考慮に入れると、計画実施者の努力を反映する低価格投資ということができる。在来線と別ルートを採用した結果、実距離は515.4キロメートルと短縮された。

 東海道新幹線の開業と商業的成功は世界の注目を集めた。それがもたらした影響は後述する。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

新幹線が成功した理由

在来線から独立した鉄道システムとして、標準軌、軌道中心間隔4.2メートル(山陽新幹線以後4.3メートル)、車体幅3.4メートル、高さ4.5メートルの新しい規格を採用し、車体長25メートル、2+3人掛けの5列座席を可能とした。営業列車はすべて旅客とし、加減速性能の高い流線形の電車編成を運行した。列車種別も各駅停車列車と通過駅の多い速達列車の2種類に単純化、駅構造を標準化し、時速200キロメートルでも列車の追突や衝突を防ぐ自動列車制御装置(ATC装置)や列車集中制御装置(CTC装置)をはじめとする安全システムを導入、在来線や道路との平面交差をなくすなど、安全性と生産性を高めた。これにより高速大量輸送による高収益の鉄道を実現することができた。

 在来線が狭軌で建設され、速度向上や輸送力増強に限界があることから、新幹線は標準軌を採用し、大型車体断面を可能とした。人口と産業の集積している東海道新幹線では有効な手段であったが、標準軌のネットワークが整備されている欧米の鉄道が、在来線の輸送のボトルネック解消のためにバイパスの新線を建設して高速列車を運転していることとは異なる方法であった。高速列車ネットワークの全国への拡大に際し、輸送需要の少ない地域にも大量高速の標準軌新幹線を建設するようになった。車体断面の小さいミニ新幹線やスーパー特急が提案されても、地方には受け入れられなかった。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

新幹線の技術

(1)土木技術

(略)

(2)軌道技術

(略)

(3)雪対策

(略)

(4)大規模修繕

(略)

(5)地震対策

(略)

(6)車両技術

(略)

(7)電気技術

(略)

(8)列車検知および制御システム

(略)

(9)列車集中監視・制御システム

(略)

(10)列車無線システム

(略)

(11)駅設備

(略)

各新幹線の概要

東海道新幹線

1964年(昭和39)10月1日開業。東京―新大阪間515.4キロメートル、開業時は東京、新横浜、小田原、熱海、静岡、浜松、豊橋、名古屋、岐阜羽島(ぎふはしま)、米原、京都および新大阪の12駅であり、その後、品川、三島、新富士、掛川(かけがわ)および三河安城(みかわあんじょう)の5駅が設置された。車両基地は、東京(品川)、名古屋、大阪(鳥飼(とりかい))に、工場は浜松に設けられた。その後、三島および大井車両基地が新設され、品川は廃止された。軸重16トン、複線、曲線半径2500メートル、軌道中心間隔4.2メートル、最急勾配1000分の15、縦曲線半径1万メートルの規格で建設され、路盤274キロメートル、高架・橋梁区間176キロメートル、トンネル69キロメートルである。全線バラスト軌道を敷設している。交流25キロボルト、60ヘルツ、BT饋電方式で電化され、富士川以東は50ヘルツを60ヘルツに変換している。開業時は、全電車方式の0系12両編成で、速達列車の「ひかり」と各駅停車列車の「こだま」がそれぞれ1時間間隔で運転された。東京―新大阪間はひかり4時間、こだま5時間であったが、開業1年後にはひかり3時間、こだま4時間運転となった。

 国鉄の分割・民営化によりJR東海が事業者となり、1992年(平成4)3月14日より東海道・山陽新幹線の第3世代の電車として300系が登場し、東京―新大阪間を2時間半、最高時速270キロメートルで運転できる列車が設定され、「のぞみ」と命名された。量産車の整備ができた1993年3月のダイヤ改正からは東京―博多間を5時間04分で運転、さらに山陽新幹線では1997年3月からJR西日本の開発した最高時速300キロメートルを誇る500系「のぞみ」が運転を開始した。同年11月からは東海道新幹線でも500系「のぞみ」の運行が始まり、東京―博多間の所要時間は最短4時間49分となった。ただし、東海道新幹線内は最高時速275キロメートルである。2012年(平成24)3月のダイヤ改正で、東海道新幹線の列車は、すべて700系、N700系およびN700A系となり、最高運転速度を時速285キロメートルに引き上げ、500系は山陽新幹線のみの運行となった。新たに開発されたN700S系が2020年(令和2)7月1日から営業運転を開始し、2023年までに16両40編成の投入が計画されている。これにより、700系およびN700系は東海道新幹線からは引退する。

 2019年度の輸送量は、旅客人キロ540億0896万人キロ、平均通過旅客数26万7039人・日キロである。全列車16両編成で運行され、座席数は、普通車13両(うち自由席3両、1119人)、グリーン車3両(200人)の編成では計1319人分あり、これだけの座席数の列車は、世界でも他に類をみない。しかも東海道新幹線区間では1日291列車もダイヤ設定され、どの列車もほぼ同一性能で、最高時速は285キロメートルの高速である。東京発の列車は「のぞみ」を主として、1時間最大15本という通勤電車に相当する頻度で長大編成の高速列車群を運転しており、このような鉄道は、世界でも東海道新幹線だけである。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

山陽新幹線

東海道新幹線の完成に続いて、1965年、国鉄第三次長期計画による新大阪―博多間の山陽新幹線が計画された。第1期工事として新大阪―岡山間が1967年に着工され、1972年3月15日に営業を開始した。岡山までの開通後、第一次オイル・ショックが起こり、インフレが進行したため、工事進行は計画より遅れ、博多までの全線が開業したのは1975年3月10日である。

 新大阪―博多間553.7キロメートル、最高時速は300キロメートル。開業時は新大阪、新神戸、西明石(にしあかし)、姫路、相生(あいおい)、岡山、新倉敷(しんくらしき)、福山、三原、広島、新岩国、徳山、小郡(おごおり)(現、新山口)、新下関、小倉(こくら)および博多の16駅であり、その後、新尾道(しんおのみち)、東広島および厚狭(あさ)の3駅が設置された。また、博多車両基地内に博多南駅が設けられ、基地回送列車を利用して博多との間で特急料金不要の列車を運行している。車両基地は、岡山、広島および博多に設けられ、博多は仕業・交番検査から全般検査まで実施する総合車両所となっている。軸重16トン、複線、曲線半径4000メートル、軌道中心間隔4.3メートル、最急勾配1000分の15、縦曲線半径1万5000メートルの規格で建設され、路盤70キロメートル、高架橋161キロメートル、橋梁51キロメートル、トンネル280キロメートルである。橋梁区間は有道床軌道とし、騒音対策とした。60キログラムレールを採用し、新大阪―岡山間はバラスト軌道であるが、岡山―博多間はスラブ軌道を採用した。交流25キロボルト、60ヘルツ、AT饋電、重コンパウンド架線方式で電化された。小倉―博多間は炭鉱地帯を走行し、地下坑道の陥没も見込まれ、開業から1年間は徐行運転により路盤が安定するのを待った。

 国鉄の分割・民営化によりJR西日本が事業者となり、JR東海との境界は東京起点から518.202キロメートルの地点である。2019年度の輸送量は、旅客人キロ193億2470万人キロ、平均通過旅客数8万1987人・日キロであり、列車は東海道新幹線との相互直通運転列車「のぞみ」および「ひかり」、九州新幹線との相互直通運転列車「みずほ」「さくら」および「つばめ」のほか、山陽新幹線内区間列車「こだま」がある。東海道新幹線との直通列車はJR東海と共通の16両編成、その他の列車は6両または8両編成であり、普通車指定席を2+2列としている。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

東北新幹線

東北新幹線は、上越新幹線とともに1971年に着工され、1982年6月23日に大宮―盛岡間が開業したが、上野への乗入れは、用地の手当て、公害対策などでさらに遅れ、1985年3月14日に実現した。東北新幹線の上野―大宮間の建設に際し、新幹線と併設する形で赤羽―大宮間に通勤新線が建設され、赤羽線および川越線と接続され埼京線となった。上野―大宮間については、沿線の環境に配慮して最高運転速度を時速110キロメートルとされた(騒音対策工事完了後の2021年3月より、埼玉県内では時速130キロメートルに引上げ)。2002年12月1日には東北新幹線の盛岡―八戸間96.6キロメートルが延長開業、その後、2010年12月4日には八戸―新青森間81.8キロメートルが開業した。

 東京―新青森間674.9キロメートル、東京、上野、大宮、小山(おやま)、宇都宮(うつのみや)、那須塩原(なすしおばら)、新白河(しんしらかわ)、郡山(こおりやま)、福島、白石蔵王(しろいしざおう)、仙台、古川(ふるかわ)、くりこま高原、一ノ関、水沢江刺(みずさわえさし)、北上、新花巻(しんはなまき)、盛岡、いわて沼宮内(ぬまくない)、二戸(にのへ)、八戸、七戸十和田(しちのへとわだ)および新青森の23駅があり、大宮で上越新幹線と、福島で山形新幹線と、盛岡で秋田新幹線と、新青森で北海道新幹線と接続している。

 車両基地は、上野、小山、仙台および盛岡に設けられ、仙台は仕業・交番検査から全般検査まで実施する総合車両所となっている。このほかに、新青森に盛岡新幹線車両センターの派出所が、那須塩原に電留線(電車の留置のための設備)が設けられている。軸重17トン、複線、曲線半径4000メートル、軌道中心間隔4.3メートル、最急勾配1000分の20、縦曲線半径1万5000メートルの規格で建設され、路盤51キロメートル、高架橋313キロメートル、橋梁79キロメートル、トンネル235キロメートルである。60キログラムレール、スラブ軌道とあわせ、除雪した雪を高架橋にため込む貯雪構造を採用した。交流25キロボルト、50ヘルツ、AT饋電、重コンパウンド架線方式で電化された。

 車両は耐寒耐雪構造の200系12両編成を使用し、時速210キロメートルでの運転を行い、速達列車の「やまびこ」と各駅停車列車の「あおば」の2種類であった。大宮開業時は、上野―大宮間には185系電車14両の新幹線リレー号を30分間隔で運行した。1991年6月20日、東北・上越新幹線の上野―東京間3.6キロメートルが開通し、東京駅で東海道新幹線列車と同じレベルのプラットホームで列車の相互乗換えが可能となった。開業時は12両編成対応のプラットホームは1面2線しか確保できなかったので、列車発着本数が制約され、一部列車は上野駅まで引き上げて折返し整備を行った。

 当時、首都圏の地価上昇に伴い、遠距離通勤が拡大し、税制改正もあって新幹線通勤定期券がJR東日本でも月2万枚以上売れていた。東京駅の構造は激増する通勤輸送のための増発や増結を困難としていた。このため、全2階建て新幹線電車E1系(時速240キロメートル)が開発された。12両編成で200系16両分の座席を提供することができた。通勤を主目的としたので、一部自由席は3+3人掛けの座席配置とし、方向転換を自動で行うようにして、折返し時間を短縮していた。

 1997年の北陸新幹線開業にあわせて、東京駅の中央線プラットホームをかさ上げし、空いたスペースに山手線内回りと京浜東北線北行(大宮方面行き)を移し、山手線外回り、京浜東北線南行(大船方面行き)、東海道本線のプラットホームを順次移設して、生み出したスペースに新幹線用1面2線を新設し、プラットホームの長さも16両対応とした。これにより、東京駅発着の列車本数を増やすことができた。同時に200系の後継としてE2系が開発され、時速275キロメートル運転による時間短縮が図られた。さらに、通勤時間帯の輸送力増強のため、E1系の増備として、全2階建て新幹線電車E4系(時速240キロメートル)が開発され、基本8両編成、2編成連結16両で座席数は1634人分となった。これは、世界最大の輸送力であったが、東北新幹線での定期運行は2012年9月に終了し、上越新幹線からも2021年10月に引退した。

 2016年3月26日には北海道新幹線の新青森―新函館北斗間148.8キロメートルが開業し、新青森で東北新幹線と接続。最高時速320キロメートルのE5系およびH5系(愛称「はやぶさ」)により、東京―新函館北斗間823.7キロメートルは最短4時間02分で結ばれた。なお、青函(せいかん)トンネルは、建設当初から北海道新幹線の走行も考慮し、大断面のトンネルを採用していた。北海道新幹線開業のため、貨物列車の走行も可能な標準軌と狭軌の3線軌条区間としている。

 2022年時点の東北新幹線の最高速度は、東京―大宮間時速130キロメートル、大宮―宇都宮間時速275キロメートル、宇都宮―盛岡間時速320キロメートル、盛岡―新青森間時速260キロメートルである。

 2019年度の輸送量は、旅客人キロ154億9015万人キロ、平均通過旅客数5万9301人・日キロであり、E2系およびE5系10両編成単独あるいはミニ新幹線用E3系またはE6系と連結した最大17両編成が運行されている。2012年9月までE4系による16両編成あるいはE4系8両とE3系7両の連結運転も行われていた。

 通過駅の多い速達列車の「はやぶさ」および「はやて」、速達列車の「やまびこ」および、各駅停車列車「なすの」が運転されている。「はやぶさ」の一部列車は東京―盛岡間を秋田新幹線「こまち」と連結して、「やまびこ」の一部列車は東京―福島間を山形新幹線「つばさ」と連結して走行している。E5系とH5系にはグリーン車よりもグレードアップした、2+1列座席、軽食サービスつきのグランクラスを1両連結している。10両編成の定員は、グランクラス車18、グリーン車55、普通車650の計723となっている。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

上越新幹線

上越新幹線は、東北新幹線と同時の1971年に着工され、1982年11月15日には上越新幹線の大宮―新潟間が営業運転を開始した。

 大宮―新潟間269.5キロメートル、開業時は大宮、熊谷(くまがや)、高崎、上毛高原(じょうもうこうげん)、越後湯沢、浦佐、長岡、燕三条(つばめさんじょう)および新潟の9駅であり、その後、本庄早稲田(ほんじょうわせだ)が新設された。大宮で東北新幹線と、高崎で北陸新幹線と接続している。北陸新幹線が金沢へ延伸される前は、高規格化された北越北線(現、北越急行ほくほく線)と越後湯沢で接続し、富山および金沢へのルートを形成していた。北越北線は狭軌の単線電化線であるが、時速160キロメートル運転を行った。また、越後湯沢の保線基地を活用し、スキー場と直結するガーラ湯沢駅を設置。冬季のみ東京からの直通列車を運行している。

 車両基地は、新潟に設けられ、台車検査と全般検査は仙台で実施している。建設規格および電気方式は東北新幹線と同じである。路盤3キロメートル、高架橋132キロメートル、橋梁33キロメートル、トンネル107キロメートルである。60キログラムレール、スラブ軌道の採用とあわせ、温水による融雪設備を設けている。

 上越新幹線の最高速度は、200系を使用しての時速275キロメートル運転も行われたが、現在は、大宮―新潟間時速240キロメートルである。

 2019年度の輸送量は、旅客人キロ48億2515万人キロ、平均通過旅客数4万3424人・日キロであり、E2系10両編成、E4系8両または16両編成が運行していたが、順次E7系12両編成に置き換わっている。なお、全2階建て車両E4系は、東北新幹線定期運行終了後も上越新幹線で運転されていたが、2021年10月に引退した。

 通過駅の多い速達列車「とき」および各駅停車列車「たにがわ」が運転されている。E7系の定員は、グランクラス車18、グリーン車63、普通車843の計924となっている。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

ミニ新幹線

JR東日本では在来線を新幹線と同じ軌間に改軌または併設して、東北新幹線から直通運転できるようにし、1992年7月1日に奥羽(おうう)本線の福島―山形間87.1キロメートルに山形新幹線(愛称「つばさ」)が、さらに1997年3月22日に田沢湖(たざわこ)線・奥羽本線の盛岡―秋田間127.3キロメートルに秋田新幹線(愛称「こまち」)が開業した。ミニ新幹線とよばれるこの方式は、在来線の線形および施設構造物を基礎にした線路改良であるため、建設投資は少なくてすむが、この区間の列車走行速度は在来線なみに抑えられる。これにより、東京―山形間は最短2時間27分、東京―秋田間は3時間49分で結ばれることになった。1999年12月4日に山形新幹線は新庄まで61.5キロメートル延伸された。

 山形新幹線開業のため、「つばさ」用に車体長20メートル、車体幅2.9メートルの400系6両編成が開発され、東北新幹線上は単独もしくは200系またはE4系と連結して運転された。旅客が増えたことから7両編成となり、2010年4月までにE3系7両編成に置き換えられた。最新のE3系の定員は、グリーン車23および普通車371の計394である。2024年から最高時速300キロメートルのE8系に置き換えられる計画である。定員は普通車329、グリーン車26の計355である。

 秋田新幹線「こまち」用には、車体長20メートル、車体幅2.9メートルのE3系5両編成が開発され、使用された。旅客が増えたことから6両編成となり、東北新幹線上はE2系またはE5系と連結して運転されたが、速度向上のため、2014年3月に時速320キロメートルのE6系7両編成に置き換えられた。定員は、グリーン車22および普通車310の計332である。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

北陸新幹線

1997年10月1日に高崎―長野間117.4キロメートルが長野新幹線として開業、東京―長野間を最短1時間23分で結んだ。2015年3月14日には、長野―金沢間228.0キロメートルが開業し、本来の名称である北陸新幹線に改称した。東京―金沢間を最短2時間27分で結ぶ。

 計画当初は高崎―軽井沢間がフル規格、軽井沢―長野間がミニ新幹線であった。1990年に1998年の冬季オリンピック長野大会開催決定を受け、フル規格に計画が変更された。東京から北陸方面へは上越新幹線と北越北線(現、北越急行ほくほく線)の乗継ぎで結ぶことが考えられ、魚津(うおづ)―糸魚川(いといがわ)間および高岡―金沢間を高規格新線とするスーパー特急方式が計画された。しかし、1997年3月からなし崩し的に長野からフル規格での新幹線延伸とスーパー特急区間のフル規格化が進められた。上越新幹線高崎駅から時速160キロメートルの分岐器で分岐する。

 高崎―金沢間345.4キロメートル、高崎、安中榛名(あんなかはるな)、軽井沢、佐久平(さくだいら)、上田、長野、飯山(いいやま)、上越妙高(じょうえつみょうこう)、糸魚川、黒部宇奈月温泉(くろべうなづきおんせん)、富山、新高岡および金沢の13駅が設けられ、上越妙高がJR東日本とJR西日本との境界となっている。

 車両基地は、新潟、長野、白山(はくさん)に設けられ、白山は総合車両所となっている。JR東日本の車両の台車検査と全般検査は仙台で施工している。複線、曲線半径4000メートル、軌道中心間隔4.3メートル、最急勾配1000分の30、縦曲線半径1万5000メートルの規格で建設され、路盤23キロメートル、高架橋124キロメートル、橋梁44キロメートル、トンネル166キロメートルである。60キログラムレール、スラブ軌道を採用し、高崎―長野間は貯雪式、長野―金沢間は貯雪式とあわせ、側方排雪高架橋、温水による融雪等の雪対策を実施している。交流25キロボルト電化であるが、国内の商用周波数50ヘルツと60ヘルツの境界を走行するため、軽井沢、佐久平間で50ヘルツから60ヘルツに、上越妙高、糸魚川間で50ヘルツに、糸魚川、黒部宇奈月温泉間でふたたび60ヘルツに切り替えている。

 東京からの直通列車のほか、線内の折返し列車が運行されている。車両は、高崎―長野間開業時には50/60ヘルツ両用のE2系8両編成を使用していたが、金沢開業にあわせ、JR東日本とJR西日本共同開発のE7系およびW7系12両編成に置き換えられた。E7系はJR東日本、W7系はJR西日本所有である。2019年10月13日、台風19号による大雨で千曲(ちくま)川の堤防が決壊し、長野車両基地に留置していた10編成(120両)が水没し廃車となった。車両不足を補うため、上越新幹線のE4系の取替えを遅らせて、上越新幹線用に発注されていたE7系を一時的に転用した。

 2019年度の輸送量は、JR東日本区間旅客人キロ22億0945万人キロ、平均通過旅客数3万4126人・日キロ、JR西日本区間12億8547万人キロ、2万0832人であり、E7系およびW7系12両が運行されている。

 列車は「かがやき」「はくたか」および「あさま」の3種類が運転され、同じ愛称の列車であっても停車駅が異なる。「あさま」は東京―長野間の列車である。

 現在、金沢―敦賀間125キロメートルが2024年開業をめどに建設工事中である。路盤2キロメートル、橋梁15キロメートル、高架橋59キロメートル、トンネル38キロメートルで、小松、加賀温泉、芦原温泉(あわらおんせん)、福井、越前たけふ、および敦賀に駅が設置される予定である。

 敦賀と大阪を結ぶルートについて、2016年12月の与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームは、小浜(おばま)・京都ルートを決定し、鉄道・運輸機構に詳細調査が依頼されている。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

九州新幹線

1972年6月に鹿児島ルートが基本計画に記され、追いかけて12月に長崎ルート(西九州ルート)が加えられ、1973年11月に整備計画が決定した。工事計画認可に向けて建設費の圧縮が議論され、1991年9月に八代(やつしろ)―西鹿児島間暫定整備として着工に至り、博多―八代間は在来線利用のため、狭軌車両が新線に直通して時速200キロメートル程度で走行するスーパー特急方式が選択された。しかし、スーパー特急方式では山陽新幹線との直通運転ができないとの問題があり、2001年4月にすべてフル規格で建設されることになった。JR九州が事業者であり、JR西日本との境界は博多駅から南へ約8キロメートルの地点である。

 2004年3月13日に九州新幹線の新八代―鹿児島中央(西鹿児島を改称)間126.8キロメートルが開業した。新八代で在来線特急列車を新幹線と同じプラットホーム発着として利便性を確保した。2011年3月12日の博多―新八代間130.0キロメートルの開業により、博多―鹿児島中央間は最短1時間19分となった。

 博多―鹿児島中央間256.8キロメートル、博多、新鳥栖(しんとす)、久留米(くるめ)、筑後船小屋(ちくごふなごや)、新大牟田(しんおおむた)、新玉名(しんたまな)、熊本、新八代、新水俣(しんみなまた)、出水(いずみ)、川内(せんだい)および鹿児島中央の12駅が設けられた。

 車両基地は、新八代―鹿児島中央開業時に川内に設けられたが、博多開業に伴い熊本に総合車両所を設置し、川内は電留線扱いとなった。軸重16トン、複線、曲線半径4000メートル、軌道中心間隔4.3メートル、最急勾配1000分の35、縦曲線半径1万5000メートルの規格で建設され、路盤28キロメートル、橋梁20キロメートル、高架橋76キロメートル、トンネル125キロメートルである。交流25キロボルト、60ヘルツで電化している。

 2019年度の輸送量は、旅客人キロ19億5035万人キロ、平均通過旅客数1万8445人・日キロであり、JR九州オリジナルの800系6両編成とJR西日本と共通仕様のN700A系8両編成が運行されている。山陽新幹線との相互直通運転にはおもにN700A系が使用されている。

 山陽新幹線直通列車「みずほ」と「さくら」、九州新幹線内各駅停車列車「つばめ」が運転されている。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

西九州新幹線

いわゆる長崎新幹線であり、1998年2月にルートが公表され、1999年9月に鹿児島ルートとの結節点として新鳥栖駅の設置が与党において決められた。2008年に武雄温泉―諫早(いさはや)間はスーパー特急方式で計画されたが、2012年6月にフル規格とすることが決まり、着工された。当初は地元負担や並行在来線問題で、標準軌と狭軌両方の走行が可能なフリーゲージトレイン(FGT:free gauge train)導入を前提とした。FGTは、日本鉄道建設公団がFGT研究開発組合に委託し、JR総研が1994年から開発を進めていた。FGT導入時の長崎ルートの列車は、博多―新鳥栖間は新幹線、新鳥栖―武雄温泉間は在来線、武雄温泉―長崎間は新幹線を走行する計画であった。しかし、技術上の問題解決の見通しが得られないとして、2018年8月に与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームは長崎ルートへのFGT導入を断念した。この結果、佐賀県内のルートは白紙となり、地元負担を含めた議論が続いている。

 武雄温泉―長崎間66.0キロメートル、うち路盤5キロメートル、橋梁7キロメートル、高架橋14キロメートルおよびトンネル41キロメートル。武雄温泉、嬉野温泉(うれしのおんせん)、新大村、諫早および長崎の5駅が設けられる。完成予定は2022年秋となっている。列車は「かもめ」6両編成となる計画である。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

北海道新幹線

1972年6月に青森―札幌間の整備が決定した。2005年5月に新青森―新函館(開業時は新函館北斗)間が着工され、2016年3月26日に現在の新青森―新函館北斗間148.8キロメートルが開業した。うち、路盤10キロメートル、橋梁6キロメートル、高架橋35キロメートル、トンネル97キロメートルである。このうち、1988年3月13日に開業した青函トンネルは、建設当初から北海道新幹線の走行も考慮して、大断面のトンネルを採用し、貨物列車の走行も可能な標準軌と狭軌の3線軌条区間としている。貨物列車とのすれ違い時の安全確保のため、新幹線列車の運転速度は、当初は時速140キロメートルに制限されていたが、2019年からは時速160キロメートルとしている。新青森、奥津軽(おくつがる)いまべつ、木古内(きこない)および新函館北斗の4駅が設置された。車両基地は函館に設けられた。北海道旅客鉄道(JR北海道)が事業者である。

 北海道新幹線内は最高時速260キロメートルであるが、E5系およびH5系(愛称「はやぶさ」)により、東京―新函館北斗間823.7キロメートルは最短4時間02分で結ばれ、2021年からは3時間57分となった。なお、新函館北斗駅と在来線函館駅とは在来線の「はこだてライナー」が運行され、15~22分で結ぶ。

 新函館北斗―札幌間211.5キロメートルは、2012年6月に着工し、2015年1月の政府・与党申合せにおいて当初予定の2035年開業を5年前倒しし、2030年度末とした。路盤11キロメートル、橋梁4キロメートル、高架橋27キロメートルおよびトンネル169キロメートルであり、新函館北斗、新八雲(しんやくも)、長万部(おしゃまんべ)、倶知安(くっちゃん)、新小樽(しんおたる)および札幌の6駅が設置される。札幌に電留線が設置される計画である。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

新幹線の影響

新幹線に対する世界各国の高い評価は、先進国において斜陽化していた鉄道事業見直しの気運を招いた。

 東海道新幹線開業に刺激を受けた欧米各国の鉄道は、高速列車の開発に取り組み、1970年代後半に機関車牽引(けんいん)列車による在来線での時速200キロメートル運転を実現した。高速専用線の建設とあわせて新型高速列車を投入したのは、フランスのTGVがヨーロッパ最初である。1981年開業の南東線で、パリ―リヨン間を最高時速260キロメートル(のち時速270キロメートル)で結び、その後、大西洋線、北ヨーロッパ線、地中海線、東ヨーロッパ線などを開業した。ヨーロッパではフランス以外に、ドイツ(ICE(イーツェーエー))、イタリア(ペンドリーノ)、スペイン(AVE(アベ))、スウェーデン(X2000)などで高速新線が開業している。イギリスは在来線改良と新型列車(インターシティー125)投入で、時速200キロメートル運転を実現し、1994年11月からはロンドンとパリおよびブリュッセルを結ぶユーロスターが運行されるようになった。2007年11月にイギリス内の高速新線(ハイスピード1)が開業し、イギリス内でも時速300キロメートル運転が行われるようになった。

 ヨーロッパの高速列車の特徴は、既存の標準軌のネットワークを活用し、輸送のネックとなる区間のバイパスとして高速列車専用線を建設していることである。これにより、既存のターミナル駅を使用して利便性向上と建設費抑制を図り、在来線を含めた高速列車ネットワークを拡大している。また、ヨーロッパ連合(EU)では、域内の国境を越えた高速列車の相互直通運転も行われるようになり、技術基準統一のためEU指令相互直通運転技術仕様(TSI:Technical Specification for Interoperability)が制定され、それを補強するヨーロッパ規格(EN:European Standards)が整備されている。また、それぞれの規格を統一するとともに、ヨーロッパ共通の列車運行管理システム(ERTMS:European Rail Traffic Management System)、列車制御システム(ETCS:European Train Control System)、列車無線システム(GSM-R:Global System for Mobile communications-Railway)が開発された。EUは、ヨーロッパ主要都市を時速250~300キロメートルの高速鉄道で結ぶ「ヨーロッパ高速鉄道整備計画」を推進している。しかし、1991年から進められた鉄道改革の結果、これまで高速列車が担ってきた都市間輸送は新規鉄道事業者やLCC(ローコストキャリア)、さらには高速バスなどとの間に、速度よりも運賃をめぐる競争が繰り広げられるようになった。一方で、脱炭素化のため、航空路線を高速列車で代替する動きもある。

 ヨーロッパ以外でも、韓国、台湾、トルコなどが高速鉄道を開業し、中国も2020年末まで3万8000キロメートルを建設し、在来線の高速化(時速200キロメートル以上)とあわせて高速列車ネットワークを整備している。このほか、インド、ブラジル、マレーシア、ベトナム、インドネシアなどの世界各国に高速鉄道建設計画があり、高速旅客列車のみをシステム化した新幹線方式は、世界の主要都市を結ぶ大量輸送機関としての声価を高めてゆくものと期待されている。

[佐藤芳彦]2022年7月21日

©SHOGAKUKAN Inc.

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