ソビエト連邦崩壊後、旧ソ連圏で経済界を支配する特定の新興富豪や新興財閥をさす。古代ギリシアで少数者が権力を握った寡頭制(オリガーキー)に由来することばで、日本では新興財閥実業家、寡頭資本家などと訳される。1991年のソ連崩壊後の社会混乱に乗じて歴代政権と癒着し、政権が進めた民営化の過程で、主要な旧国営企業の株式(国民1人に1万ルーブル分ずつ配られた民営化後の企業の株式と交換可能なクーポン)を安値で入手して富を築き、政治・軍事・経済に強い影響力をもつようになった。(1)エネルギー・資源、穀物・食品、軍事産業、通信・マスコミ、金融などの企業群を支配している、(2)旧ソ連圏外に、豪邸、高級アパート、大型ヨット、個人用ジェット機などの莫大(ばくだい)な資産を保有する、(3)多くがユダヤ系である、(4)政治家やその親族の知人が多く、政権交代で失脚するケースもある、などの特徴をもつ。ロシア大統領プーチンは汚職一掃を掲げて一部オリガルヒを逮捕・失脚に追い込んだが、残ったオリガルヒはプーチンに忠誠を誓って利権を確保し、政権を支える強力な既得権益層を形成している。2022年のロシアによるウクライナ侵攻に際し、欧米諸国はオリガルヒの資産を凍結するなどの制裁を科した。
ロシアのほか、ベラルーシ、ウクライナなど旧ソ連圏に多くのオリガルヒが存在する。ロシアでは、ゴルバチョフ、エリツィン両政権下で「ロゴバス・グループ」を率いた政商ベレゾフスキーBoris Abramovich Berezovsky(1946―2013)、通信・鉱業の富豪ウスマノフAlisher Usmanov(1953― )、アルミ王とよばれるデリパスカOleg Vladimirovich Deripaska(1968― )、石油王でイギリス・プレミアリーグのサッカー・チームのオーナーを務めたアブラモビッチRoman Arkadievich Abramovich(1966― )らが著名。ウクライナでは、エネルギー企業トップや首相を歴任したティモシェンコYulia Tymoshenko(1960― )らがオリガルヒにあたる。