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精神現象にかかわる医学用語で、場所、時、人に関する気づきを含んだ心理学的機能を意味する。具体的には、それぞれを「ここはどこですか?」、「今日は何月何日ですか?」もしくは「いま何時ごろですか?」、そしてたとえば家族を指さして「この人はだれですか?」と問うことで、見当識が保たれているか否かが判断される。これらはしばしば、認知機能の一種だとみなされがちである。確かにいずれも記憶の能力が関与するが、それだけでなく、いわくいいがたい気づきや直感の働きを必要とする特殊な精神機能だといえる。
上記のような問いに答えられない状態は「失見当識(しつけんとうしき)」(見当識障害)とよばれる。失見当識は、譫妄(せんもう)などの意識障害や中毒、そして認知症などさまざまな原因によって生じる。とくに救急医療の現場では、意識障害や認知症の有無を簡便に評価するためにこうした質問がなされる。また、これらの三つが障害されるときには、普通、順番があり、最初に時、次に場所、最後に人がわからなくなる。
なお、脳のどこが見当識をつかさどっているのかは定まっていないものの、脳幹と大脳半球の重要性が指摘されている。