商品やサービスを提供するための原価に、資金調達コスト、適正利潤(適正な事業報酬)を上乗せして公共料金を決定する方式。電力料金、ガス料金、水道料金、鉄道運賃などの設定で採用されている。そのほか、防衛省が特定企業から防衛装備を調達する際などにも同じ考え方による計算を行っている。この方式は複数企業による競争が行われにくく、単一、もしくは少数の企業が独占的に公共サービスを提供している場合に採用される。自由に価格を設定できるようにしておくと、独占事業体が過大な利潤を得ようとして高額な料金を設定し、消費者が不利益を被る可能性があるためである。事業者にとっても、適正利潤が得られることを前提としているため、老朽化したインフラの修繕など長期的な設備投資を計画できるメリットがある。一方で、効率化など原価削減を進めるインセンティブ(誘因)が働きにくく、過剰な設備投資を招くおそれがあるなどのデメリットがある。そのため、料金上限方式(プライス・キャップ方式)や、複数企業の原価構造を精査して基準となる料金を定めるヤードスティック方式などが活用されている。
なお、日本の電力料金が海外に比べて高い原因の一つとして、総括原価方式があげられ、2011年(平成23)3月の福島第一原子力発電所事故以降、同方式の見直しを求める声が高まった。2016年の電力小売り自由化以降、発電コストのほとんどを料金に転嫁できる総括原価方式をとらない電力料金プランが登場した。また2023年度からは、電力小売り事業者が送配電事業者に払う送配電線の使用料(託送料)についても総括原価方式が廃止され、収入上限規制(レベニューキャップ制度)が導入される。