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日本大百科全書(ニッポニカ)

秋草模様

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秋草模様
あきくさもよう

日本の代表的な模様の一つ。藤原時代(11世紀末)から今日に至るまで、工芸のあらゆる分野で愛用されてきた。これは秋草の優しく、細く、弱々しい姿が、なによりも強く日本人に「もののあはれ」を訴えかけるものであったことを物語っている。初期の秋草模様は、大きく分けると、折枝(おりえだ)風に秋草を散らした形式(たとえば西本願寺本『三十六人歌集』のうち貫之(つらゆき)集・信明(のぶあきら)集などの料紙装飾模様、東京国立博物館の片輪車螺鈿蒔絵手箱(かたわぐるまらでんまきえてばこ)の蓋(ふた)裏の模様など)と、立木風の形式(『三十六人歌集』能宣(よしのぶ)集、東京国立博物館の扇面写経のうち法華経第8巻などの料紙装飾模様)に分けられる。鎌倉時代へ展開していくのは後者で、その代表作例としては出雲(いずも)大社の『秋野鹿蒔絵手箱』があげられる。やがて室町時代になると、秋草は『春日山蒔絵硯箱(かすがやままきえすずりばこ)』(東京・根津美術館)のように点景に後退していくが、桃山時代になってふたたび秋草それ自体に対する関心が高まり、高台寺蒔絵の秋草となり最盛期を迎える。また染織模様に秋草が取り入れられるようになったのは遺品では桃山時代以後のことで、能装束、小袖(こそで)にきわめて多く見受けられるが、とりわけ元禄(げんろく)期(1688~1704)の『光琳(こうりん)描絵小袖』(東京国立博物館)は有名である。

[村元雄]

©SHOGAKUKAN Inc.

メディア

尾形光琳筆『白綾地秋草模様小袖』

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