特定地域で集中的に規制緩和や税制優遇を行い、経済の活性化に取り組む仕組み。正式名称は国家戦略特別区域制度。第二次安倍晋三(あべしんぞう)政権が2013年(平成25)、成長戦略の一環として国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号)を制定し創設を決めた。医療、農業、雇用、教育、都市開発などの規制を緩和し、ビジネス環境を整え、内外から人、企業、資金、情報を集め、国際的な経済活動の拠点形成を目的とする。省庁や業界団体などの抵抗が強い「岩盤規制」を崩し、国際競争に負けない都市づくりを目ざす。国、自治体、民間企業などが参加する区域会議で活性化の具体策を盛り込んだ計画をつくり、内閣総理大臣が認定する。2017年に構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)を改正し、特区内で現行法の規制を一時的に停止し、ドローンや自動運転など革新的技術・サービスを事業化するサンドボックス制度を導入。さらに2020年(令和2)に改正国家戦略特別区域法(スーパーシティ法)が成立し、革新的技術・サービスで規制を一括緩和して、街そのものを未来型につくり変えるスーパーシティ特区とデジタル田園健康特区の設置も可能になった。
2014年3月に第一弾として東京圏、関西圏、沖縄県、新潟市、福岡市、兵庫県養父(やぶ)市の6か所、2015年3月(第二弾)に愛知県、仙台市、秋田県仙北(せんぼく)市を、2016年1月(第三弾)に広島県および愛媛県今治(いまばり)市、千葉市(東京圏の拡大)、北九州市(福岡市の追加拡大)をそれぞれ指定した。第二、第三弾の特区は地方創生特区ともよばれる。さらに2022年4月にはスーパーシティ特区として大阪市と茨城県つくば市を、デジタル田園健康特区として石川県加賀市、長野県茅野(ちの)市、岡山県吉備中央(きびちゅうおう)町を指定した。おもな取り組みは、38年ぶりの医学部の新設、家事代行サービスの外国人活用、公立学校運営の民間開放、外国人観光客の住宅宿泊「民泊(みんぱく)」を認める旅館業法の規制緩和、実質的な企業の農地保有の解禁などがある。
日本の特区制度には、国家戦略特区制度のほか、2002年に小泉純一郎政権が創設した構造改革特区制度、2011年に民主党の菅直人(かんなおと)政権が創設した総合特区制度、東日本大震災の被災地で雇用、住宅、街づくりなどに特例措置を設ける復興特区制度などがある。以上の特区制度は、規制緩和で地域それぞれの得意な産業を伸ばすという側面が強いが、国家戦略特区は、日本の人口減少・高齢化を踏まえ、政府主導で国際競争に負けない都市づくりに取り組むという特徴をもつ。