公認会計士5人以上が社員(出資者)となり、内閣総理大臣の認可を受けて設立される公認会計士法上の特別法人。その業務は、財務書類の監査または証明のほか、財務書類の調製、財務に関する調査・立案、財務に関する相談などである。上場会社などの大企業に対する会計監査を個人組織の会計事務所が行うことの限界が指摘されたため、組織的監査体制を実現すべく、1966年(昭和41)の公認会計士法改正により制度化された。当時の公認会計士法では、社員は全員が業務執行権をもつと同時に、業務について無限連帯責任を負うことになっていた。法律上の形態としては合名会社に近い制度であるが、規模の拡大により経営実態にあわなくなってきた。そのため、2007年(平成19)6月、公認会計士法等の一部が改正され、社員の全部を有限責任社員とする「有限責任監査法人」の制度が導入された(2008年4月より施行)。この制度では、有限責任監査法人の財産をもって完済することができない債務がある場合は、監査証明ごとに指定し通知する業務を担当する者、すなわち「指定有限責任社員」がその債務を弁済する責任を負い、それ以外の社員は出資の価額を限度として責任を負うことになる。また、この制度を採用する見返りとして、最低資本金額(社員の総数に100万円を乗じた額)や損害賠償責任保険への加入、計算書類に関する監査報告書の開示などが制度化された。
2022年(令和4)4月末時点の監査法人数は275社に達している。日本の大手監査法人は、EY新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、有限責任あずさ監査法人、PwCあらた有限責任監査法人の4法人であり、それぞれ国際的な監査事務所と提携してグローバルな監査業務を展開している。