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監査リスク

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監査リスク
かんさりすく
audit risk

監査人(公認会計士または監査法人)が、財務諸表の重要な虚偽表示を看過して誤った監査意見を述べる可能性のこと。今日の会計監査は、すべての取引や勘定残高をもれなく調べるのではなく、それらの一部を調べて全体の妥当性を判断する試査の方法によって行う。したがって、財務諸表における誤りを見過ごして、監査意見を表明してしまうリスクが存在する。

 監査リスクは、次の三つのリスクからなる。

(1)固有リスクinherent risk 会計取引や勘定科目に関連する内部統制が存在していないとの仮定のうえで、財務諸表に重要な虚偽の表示がなされる可能性をいい、経営環境により影響を受ける種々のリスク、特定の取引・勘定残高・開示などが本来有するリスクである。

(2)統制リスクcontrol risk 財務諸表の重要な虚偽表示が、企業の内部統制によって防止または適時に発見されない可能性をいう。

(3)発見リスクdetection risk 企業の内部統制によって防止または発見されなかった財務諸表の重要な虚偽の表示が、監査手続を実施してもなお発見されない可能性をいう。また、監査人が不適切な監査手続を選択したり、監査手続の適用を誤ったり、その結果を誤って解釈したりすることなどもリスク要因としてあげられる。

 試査による監査においては、監査リスクはゼロにはできない。そのため、監査人は、監査リスクを許容される低い水準に抑えるように監査計画を策定し、監査を実施する。このことを監査リスク・アプローチという。アメリカでは1983年に監査基準書で規定されており、日本では1991年(平成3)の監査基準の改訂により導入された。監査リスク・アプローチは、重要な虚偽表示が生じる可能性が高い取引や勘定残高について重点的に監査の人員や時間をあてて、リスクを低減することにより、監査を効果的かつ効率的に実施するものである。

 なお、これまでのリスク・アプローチでは、固有リスクと統制リスクを個々に評価して、発見リスクの水準を決定することとしていたが、固有リスクと統制リスクは実際には複合的な状態で存在することが多く、固有リスクと統制リスクを分けて評価すると、リスク評価が形式的になり、発見リスクの水準の的確な判断ができなくなるおそれがあった。そのため、2005年(平成17)の監査基準の改訂では、固有リスクと統制リスクを結合して「重要な虚偽表示のリスク」として評価したうえで、発見リスクの水準を決定することとした。さらに、財務諸表の重要な虚偽表示は、経営者レベルでの不正や、経営者の関与による不適切な会計処理の採用により行われることが多いため、とくに会計上の見積り、収益認識等の重要な会計上の判断、不正の疑いのある取引、関連当事者間取引などについては、監査実施の過程において特別な検討を行う必要があることから、これらを「特別な検討を必要とするリスク」として、厳しく監査手続を実施するように要請した。

[中村義人]2022年11月17日

©SHOGAKUKAN Inc.

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