地球のもっとも表面を構成する層。もともと、地球内部が溶融状態にあると考えられていた時代に、その表面の固化した薄皮をさしたものであるが、現在では、モホロビチッチ不連続面より上の部分と定義するのが普通である。地殻の構造は、地震波の伝わり方や重力異常などにより研究されており、著しい地域差のあることが知られている。たとえば、大陸地域における地殻の厚さは普通30キロメートル以上あるが、海洋地域では、海水層を除けば、10キロメートルを超すことはまれである。大陸地域でも、アンデスやチベットなどの大山脈や高原ではさらに厚く、60キロメートル以上もある。こうした地殻の厚さの地域差は、アイソスタシーの考えなどにより古くから予測されていたが、第二次世界大戦後盛んになった大規模な人工地震の実験により確かめられた。大陸地域の地殻の表面は堆積(たいせき)層で覆われているが、その下は、地震波のP波速度が6キロメートル毎秒程度の花崗(かこう)岩質層と、7キロメートル毎秒程度の玄武岩質層とに分けて考えられることが多い。これらの層は、それぞれシアルおよびシマとよばれることもある。しかし、最近の詳しい人工地震の解析では、非常に複雑でもはや二層には単純化できないような地殻構造もしばしば報告されている。海洋地域における地殻には、地域差が少なくきわめて一様であるという著しい特徴がある。海嶺(かいれい)や海山など特別な地域を別にすれば、海水層を取り除いた地殻の厚さは、6~7キロメートル程度であり、内部構造にも地域差が少ない。海洋地殻は、堆積層である第一層、P波速度5キロメートル毎秒程度の第二層、7キロメートル毎秒程度の第三層という三層構造に単純化されることが多い。このうち、第二層は主として枕(まくら)状溶岩でできていることが深海ボーリングにより確かめられている。プレートテクトニクスによれば、海洋地殻は海洋プレートの最上部として中央海嶺において形成されるものであり、構造の一様さはその形成過程に関係があると考えられる。海洋地殻は海洋プレートの動きによってつねに更新されているために、もっとも古い年代の地域でも2億年程度である。これに対して、大陸地殻の大部分は地球が生まれてまもなく形成されたものであると考えられており、海洋地殻に比べて一桁(けた)以上長い歴史をもつ。
[吉井敏尅]