ある経済主体の経済活動について、記録・計算・表示するための媒体。とくに企業会計の基礎となる複式簿記では、記録対象となる経済活動や経済事象は取引とよばれ、帳簿への記録は貨幣数値(金額)により行われるが、補足的に物量数値が用いられることもある。取引について記録するための基本的単位となる項目(現金、借入金、仕入、売上など)を勘定とよび、取引による各勘定の金額の増減を左右(借方・貸方)に分けて記録する方法を仕訳とよぶ。勘定記録をもとに決算が行われ、貸借対照表、損益計算書という会計報告書が作成されることになる。
複式簿記では、日々の取引についての仕訳は仕訳帳に記録され、総勘定元帳に納められた各勘定科目に転記される。仕訳帳からは取引の履歴を、総勘定元帳からは期中の各勘定の金額増減と残高を確認できる。企業会計で使用される帳簿の種類は多岐にわたるが、複式簿記の記録に必要不可欠となる仕訳帳と総勘定元帳を主要簿とよび、主要簿の記録内容を補足するために設けられるその他の帳簿を補助簿とよぶ。補助簿は、さらに補助記入帳と補助元帳に分類される。補助記入帳とは現金出納帳や売上帳、仕入帳といった仕訳帳から分化して取引発生順の明細を示すものであり、補助元帳とは商品有高帳や仕入先(買掛金)元帳、得意先(売掛金)元帳といった特定の勘定科目の明細を示すものである。たとえば、現金出納帳を設ければ現金収入・支出の生じた日付と原因の詳細を確認でき、商品有高帳を設ければ商品の受入れ、払出しと在庫について金額のみならず物量的情報もあわせて管理することができる。
歴史的に複式簿記は、綴込(とじこみ)帳簿、紙片帳簿(ルーズリーフ型帳簿など)といった紙媒体による記録を前提としてきたが、現代では情報技術の発展に伴って電磁的媒体による電子帳簿が一般化している。日本では法務省令である会社計算規則が、会計帳簿は書面か電磁的記録で作成しなければならないことを定めている。2022年(令和4)に改正された国税に関する電子帳簿保存法(平成10年法律第25号)では、帳簿の電子保存について税務署長による事前承認制度の廃止、請求書・領収書などをスキャナー保存したデータなどについて検索機能を確保する要件を取引年月日・取引金額・取引先の3項目に限定するなどの規制の緩和が図られ、企業でのペーパーレス化のさらなる進展が予想される。なお帳簿を電子保存する媒体は、記録計算を行う組織内の磁気テープ、ハードディスクなどに限られず、クラウドサービスの利用による外部サーバーなど、当該組織の外部に存在する記録媒体に帳簿が設けられることもある。