日本大百科全書（ニッポニカ）

硬骨魚綱スズキ目ハタンポ科に属する海水魚。八丈島、小笠原（おがさわら）諸島、福島県から九州南岸にかけての太平洋沿岸、九州北岸と西岸、屋久島（やくしま）から八重山（やえやま）諸島、台湾、フィリピン、インドネシア、オーストラリア、バヌアツなど西太平洋とインド洋に分布する。体高は高く、強く側扁（そくへん）し、体高は体長の40～42％。体の背外郭は背びれの起部までは緩く湾曲し、その後は尾柄（びへい）までほとんど直線状に降下する。腹外郭は臀（しり）びれ起部まで一様に強く湾曲し、その後直線状に上昇し、尾びれ基底近くに達する。胸部の正中線上に隆起線があり、横断面はV字状。吻（ふん）は著しく短いが、目は著しく大きい。口は大きくて斜位で、上顎（じょうがく）の後端は目の中央部下に達する。下顎は上顎よりも突出する。上下両顎、鋤骨（じょこつ）（頭蓋（とうがい）床の最前端にある骨）、口蓋骨に微細な歯がある。鰓耙（さいは）は上枝に8本、下枝に20本。体側鱗（りん）は薄くてはがれやすい。鱗（うろこ）の上下にはくびれがなく楕円（だえん）形。鱗は2層に重なり、大きい鱗の下に小さい鱗がある。両眼間隔域は鱗で覆われる。側線は鰓孔の上端から尾びれの後端まで達する。側線有孔鱗数は45～54枚。背びれの起部から側線までの横列鱗数は約3枚。臀びれの基部の3分の1は小鱗をかぶる。背びれは1基で小さく、5～6棘（きょく）8～10軟条。体の中央部よりやや前方に位置し、基底長は最長鰭条（きじょう）長より短い。臀びれは背びれ基底の中央部下方から始まる。基底長は長く、体長の40％以上で、3棘34～41軟条。尾びれの後端は浅く二叉（にさ）する。体色は全体に金色で、背側で褐色。背びれは先端のみ、あるいは前縁から先端にかけて黒い。臀びれの基部は暗褐色。胸びれの基部には黒色斑（はん）がなく、一様にオレンジ色。沿岸の岩礁域にすみ、日中は大きい群れで岩やサンゴの下や穴の中にいて、夜間に外に出て摂餌（せつじ）する。最大体長は13センチメートルほどになる。定置網などで漁獲されるが、一般に食用としてそれほど利用されていない。

［尼岡邦夫］2023年9月20日