とくに古墳時代を中心とした、軟質の岩石でつくられた、まつり用の模造品をいう。多くは青緑色で、滑石質の岩石による形代(かたしろ)である。
ていねいに模造されたものも初期にはあるが、多量、粗製化したものが、古墳内部主体内、祭祀(さいし)遺跡などから発見される。おもなものには、有鈕(ゆうちゅう)鏡、有孔円板、玉類(勾玉(まがたま)、管(くだ)玉、棗(なつめ)玉、臼玉など)、釧(くしろ)、櫛(くし)、剣形(けんがた)、刀子(とうす)、鏃(やじり)、甲(よろい)、盾(たて)、斧(おの)、鎌(かま)、鑿(のみ)、鉇(やりがんな)、鍬(くわ)、鋤(すき)、機織具、紡錘車、案、まないた、槽、容器(坏(つき)、坩(つぼ)、甑(こしき)など)、人形、馬形、舟形、鐸(たく)形、子持(こもち)勾玉などがある。古墳時代前期の碧玉(へきぎょく)質岩を使用した石製品の影響を受け、和泉(いずみ)黄金(こがね)塚、伊賀石山古墳、室宮山(むろみややま)古墳など前期から中期の古墳に多い。祭祀遺跡では5世紀代の遺物にていねいな作りのものがあるが、遺跡数のもっとも多いのは6世紀初頭ごろと思われ、青森県から熊本県まで分布する。その後半にはほとんど使用されなくなるが、宗像(むなかた)沖ノ島や、関東地方の一部では、形状のかなり異なるものが7~8世紀代にも少量みられる。人形、馬形、舟形などはこの時期に特徴的な遺物といえる。
また古墳の粗造多量化したものでは、玉類のほか、刀子、斧、鎌などの工具のセットが多く、祭祀遺跡では、鏡の極端な省略形とみられる有孔円板、剣形品が玉類とともにみられ、意識の差が表れる一方、東国には剣形品が、西には有孔円板が多い。とくに九州では単孔の円板が多いなどの地域差もみられる。
なお玉造りの系統を引く集団による製作工房址(し)も発見されている。