日本の子ども政策の中核を担う国の行政組織。こども家庭庁設置法(令和4年法律75号)に基づき、2023年(令和5)4月、内閣府外局として発足した。こども家庭庁担当相(内閣府特命担当国務大臣)を置き、他省庁への勧告権限を有する。事務方トップはこども家庭庁長官。職員定員は430人で、地方自治体との人事交流や民間登用を行う。少子化対策、子育て支援、いじめ・虐待・自殺防止、貧困対策などを一元的に進め、すべての子どもが自立した個人として健やかに成長する「こどもまんなか社会」の実現を担っている。縦割り行政解消のため文部科学省、厚生労働省、内閣府、警察庁などに分かれていた子ども関連部局を統合し、長官官房、成育局、支援局の3部門を設置。
長官官房はこども基本法(令和4年法律第77号)に基づき、基本方針「こども大綱」を策定し、子どもの意見を反映しながら企画立案や総合調整を担う。重要事項は、こども家庭審議会に諮って調査・審議する。
成育局は妊娠・出産の支援や、保育施設や幼稚園を利用していない未就学児への対策に取り組むほか、子どもと接する職業に就く際に、性犯罪歴がないことを確認するイギリスの制度実施機関Disclosure and Barring Service(DBS:前歴開示・前歴者就業制限機構)を参考にした「日本版DBS」や、子どもの死亡経緯を検証して再発防止につなげる「CDR(Child Death Review)」の導入にあたる。また、子どもに罰や暴力で身体的・心理的に深い傷を負わせる「不適切保育」の防止に努める。
支援局は虐待、いじめ、障害、ひとり親などのため、困難を抱える子どもやその家庭の支援にあたる。重大ないじめには、学校または学校の設置者に対して、文部科学省に説明や情報提供を求める勧告を実施。家族の介護や世話を日常的に行っているヤングケアラーの早期把握に努め、福祉・医療関係者と連携して支援する。さらに障害児や里親支援も担い、子育て世帯を総合支援する「こども家庭センター」の全国展開に取り組む。また、国立児童自立支援施設である「武蔵野学院」(さいたま市)と「きぬ川学院」(栃木県さくら市)も所管する。
人口減少に転じた日本では、2009年(平成21)以降、子ども行政を一元化する「子ども家庭省」「子ども庁」「子ども省」などの構想が浮上しては見送られてきた。こども家庭庁発足にあたって、懸案の幼保一元化(幼稚園と保育所の所管統一)は見送られたが、幼稚園、保育園、認定こども園などの施設で共通の教育・保育サービスの提供を目ざす。