硬骨魚綱スズキ目キントキダイ科に属する海水魚。遠州灘(えんしゅうなだ)、三重県、和歌山県、宮崎県の太平洋沿岸、吐噶喇(とから)海峡、琉球(りゅうきゅう)諸島沿岸、東シナ海、南シナ海、およびインドネシア、インド、南アフリカなど西太平洋とインド洋に広く分布する。体高はかなり高くて側扁(そくへん)し、体高は体長の44.5~65%。目はきわめて大きく、頭長のおよそ半分。両眼間隔域は狭い。後鼻孔は大きくて、三角形状に開く。口は大きく、斜位で、上顎(じょうがく)の後端は瞳孔(どうこう)の前縁下に達する。主上顎骨後端の幅は広い。下顎は上顎より突出する。上下両顎に幅の広い絨毛(じゅうもう)状の歯帯があり、上顎の外列歯はいくぶん大きく、わずかに長い。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の下縁と後縁にやや強い鋸歯縁(きょしえん)がある。隅角(ぐうかく)部には若魚では顕著な棘(きょく)が1本あるが、成魚では痕跡(こんせき)的。全鰓耙(さいは)数は23~26本。体と頭部ははがれにくい小さい櫛鱗(しつりん)で覆われる。鰓条骨の前と下の膜上に鱗列がある。体側鱗の後縁にある鋭くとがった小棘は成長につれて数を増し、いくぶん強くて厚くなる。背びれは10棘10~12軟条で、背びれ棘は太くて、第4棘が最長。軟条部基底長はきわめて短く、棘部基底長の約半分。臀(しり)びれは3棘10軟条で、第3棘が最長。尾びれの後縁は丸い。腹びれは短くて、臀びれ始部に達しない。頭部と体は赤色~赤橙(せきとう)色で、5本の白色または淡色横帯があり、そのうち第1帯は鰓蓋骨上に、第5帯は尾柄(びへい)部の後端に位置する。すべての帯は細いが、背腹で多少太くなる。第3帯の幅は瞳孔のおよそ4分の1~5分の2。成長とともに細く、不鮮明になる。ひれは赤色~赤橙色で、腹びれの先端部、背びれと臀びれの軟条部の縁辺および尾びれの後縁は黒い。背びれ棘とその鰭膜(きまく)の前半部は赤桃色または淡黄桃色。胸びれは赤みを帯びた淡色。最大体長は27センチメートルほどに達する。水深100~250メートルに生息し、底引網、立延縄(たてはえなわ)などで漁獲される。
クルマダイと混同されていたが、2012年(平成24)に魚類研究者の岩槻幸雄(いわつきゆきお)(1957― )らによって別種とされた。ミナミクルマダイは背びれと臀びれの軟条部の縁辺および尾びれの後縁が黒いこと、全鰓耙数が23~26本であることで、クルマダイと容易に区別できる。ミナミクルマダイは日本では琉球諸島以外では少ない。