経済に関する先進自由主義諸国間の国際協力機関。略称OECD。1948年、第二次世界大戦によって破壊されたヨーロッパ経済の復興の促進とマーシャル・プランの受け入れを目的としてヨーロッパ経済協力機構Organization for European Economic Co-operation(OEEC)が設立された。その後ヨーロッパ経済の回復とともに、当初は西ヨーロッパ諸国に対する援助供与国であったアメリカが、これらの国々と経済政策の調整を行う必要が生まれ、同時に先進諸国においては、当時増大しつつあった開発途上国援助の負担を分担することが要請された。こうして国際社会の発展および構造変化に対応するための先進国間の新しい協調体制の確立を目ざして、OEECを発展的に解消させ設立されたのがOECDである。OECD条約は1960年12月14日に署名され、翌1961年9月30日に発効した。
OECDの目的は、(1)加盟国の経済成長、雇用増大および生活水準の向上、(2)開発途上国援助、(3)多角的な自由貿易の拡大、の3点を基本としているが、国際社会の多様化に対応して、資源エネルギー、一次産品、環境保護、国際投資および多国籍企業、教育、消費者保護等の諸問題についても積極的に取り組んできた。
OECDの発足時の加盟国(1961年設立時の原加盟国)は、OEECに加盟していた18か国(アイスランド、アイルランド、イギリス、イタリア、オーストリア、オランダ、ギリシア、スイス、スウェーデン、スペイン、デンマーク、ドイツ、トルコ、ノルウェー、フランス、ベルギー、ポルトガル、ルクセンブルク)と、アメリカおよびカナダの計20か国であった。その後1964年(昭和39)に日本、1969年にフィンランド、1971年にオーストラリア、1973年にニュージーランドが加盟した。さらに1990年代に入ると、1994年にメキシコ、1995年にチェコ、1996年にハンガリー、ポーランドおよび韓国が、2000年にはスロバキアも加盟し、メンバーの多様化傾向がみられるようになった。その後、2010年にはチリ、スロベニア、イスラエルおよびエストニアが、2016年にはラトビアが、2018年にはリトアニアが、2020年にはコロンビアが、そして2021年にはコスタリカが加盟した。2023年7月末の時点で加盟国は38か国である。
OECDの最高の意思決定機関は、全加盟国によって構成される理事会である。理事会は、年一回開催される閣僚級レベルの閣僚理事会と常駐代表会議の二つに分かれ、下部機関の設置、各種の政策決定、事務総長の任命などの権限を有し、決定は全会一致を原則としている。理事会には、理事会を支える常設の補助機関として、執行委員会、予算委員会、対外関係委員会がある。事務総長は理事会によって任命され、常駐代表会議の議長をも務め、任期は5年である。事務局はパリ。OECDの活動は、数多くの分野別に設けられた委員会等によって実施されている。たとえば、経済政策委員会(EPC)、貿易委員会(TC)、投資委員会(CI)、雇用・労働・社会問題委員会(ELSAC)、科学技術政策委員会(CSTP)、産業・イノベーション・起業委員会(CIIE)、教育政策委員会(EDPC)、農業委員会(COAG)、開発援助委員会(DAC)、公共ガバナンス委員会(PGC)、地域雇用経済開発プログラム運営委員会 (LEED)等が挙げられる。さらに原子力機関(NEA)、国際エネルギー機関(IEA)等の特別機関も存在している。
国際機構としてのOECDの特徴は、市場経済を原則とする先進国を主たる加盟国としているため、メンバー間に同質的性格およびクラブ的性格を有していることである。その結果、各加盟国の政策調整は、関係国代表が直接協議する、いわゆるコンフロンテーション方式がとられている。さらにOECDにおいては意見および情報の交換が中心で、結論を得るよりも、各国代表による討論を通じて共通の理解が形成されることに重点が置かれている。したがって、OECDとしての政策決定を行う場合には、多数決ではなく全会一致方式がとられる。