日本に住む、住民票をもつすべての人に12桁(けた)の個人番号を割り当て、国や地方自治体が社会保障や税などの情報を効率よく管理しようとする制度。2013年(平成25)に成立したマイナンバー法(正称「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」平成25年法律第27号)に基づき、地方自治体が2016年から運用を始めた。マイナンバー(個人番号)で住民の所得、納税、保険料納付などの情報を一元管理することで、税金・保険料徴収の効率化、年金や医療などの社会保障関係の給付の適正化、行政手続の簡素化につなげるねらいがある。アメリカ、フランス、スウェーデン、ドイツ、韓国など主要国が導入している個人番号制度の一種である。
マイナンバーは原則、生涯同じ番号を使わねばならない。ただし、漏洩(ろうえい)して不正利用のおそれがある場合、本人申請で変更可能である。また、写真とともに申請すれば、ICチップを内蔵したマイナンバーカードが交付される。民間企業は2016年から、従業員とその家族、アルバイトなどの源泉徴収票や社会保障関係書類などにマイナンバーを記載して国や自治体に提出する義務がある。政府は2017年からマイナンバー専用サイト「マイナポータル」の運用を開始。マイナンバーカードが健康保険証・母子健康手帳・障害者手帳として利用できるほか、確定申告、児童手当や被災者支援金の受給、戸籍・住民票の交付、パスポートの申請・更新、保育所への入所、要介護認定、医師などの国家資格の届け出・管理、予防接種や健康診断・処方結果などの履歴閲覧、預金口座への登録などでの本人確認・情報取得が順次可能となった。2025年から運転免許証として利用できるほか、キャッシュカードやクレジットカードとして活用できるようにする計画である。
制度開始当初はマイナンバーカードの交付率が低迷した。政府は2022年度(令和3)末までに、ほぼすべての国民の保有を目標として掲げ、新規申請者や公金受取口座登録者などへポイント(最大2万円分)を付与するマイナポイント制度で普及を後押しし、2024年秋に従来の健康保険証廃止(カード未保有者には一定期間有効な資格確認書を交付)を打ち出したこともあって、2023年7月時点の交付率は75%に上昇した。しかし、2023年に公金受取口座の登録ミス、年金・健康保険証・障害者手帳などの個人情報の誤登録、別人の住民票の誤交付などが相次ぎ、マイナンバー制度や政府の性急な普及策への批判・不信が高まった。また、個人情報の漏洩(ろうえい)やプライバシーの侵害、国の国民監視強化などを懸念する声も一部には依然として根強い。